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国際開発工学専攻を卒業して今思うこと

 

柳田 希与人

千代田化工建設(株) プロセス設計センター
(国際開発工学専攻OB:修士課程修了)

科学技術は日々、発展している、それは日本に住む誰もが感じていることだと思います。
しかし、科学技術が日々進化している世の中であっても、全く解決に進んでいない問題もたくさんあります。近年、話題の地球温暖化問題もその一つだと思います。

私が大学時代、研究室で行っていた研究も地球温暖化に影響を与える温室効果ガスの一つである亜酸化窒素(N2O)を分解して、窒素(N2)と酸素(O2)にする、つまりただの空気にしてしまう触媒の開発でした。その研究を通じて、私は自分が研究を行っていた触媒について、その反応機構、触媒の特性について専門的な知見を得ることができました、そして研究に必要な化学工学や無機化学の基礎知識も習得できたと思います。

しかし、地球規模の問題については、その程度の知見や知識では解決にはなりません。
地球温暖化問題は、私が例え一つのノーベル賞級の素晴らしい触媒を開発したところで解決する問題ではないと思います。

一つの技術を商品化するには、触媒開発のような基礎研究をする人がいて、それを工業化するために応用化の研究をする人がいる。そうして出来上がった技術を生産する人がいる。それには、企業の努力、大学のような研究機関のサポート、そして場合によっては政府機関の援助が必要です。

また、地球温暖化問題のような地球規模の問題は、日本だけで頑張って何とかできる話ではありません。アメリカのような超大国、エネルギー資源を持つ国、持たない国、そして発展途上国との協力が必要です。

私が大学時代、国際開発工学専攻に所属していて学んだ最も大切なことは、「自分一人では何もできない。」ということであったのではないかと思います。

プラントエンジニアリング会社に就職し、そのことをさらに強く感じるようになりました。
入社後、海外の天然ガス液化プラントのプロセス設計を担当しています。プラントには様々な技術がつまっており、自分の化学工学の技術だけでなく、圧力容器や圧縮機、ポンプなどの機器設計、配管設計、土木設計の技術者との協力なしでは、プラントの設計はできません。
また、カタール、サハリンにあるプラント建設現場に赴任した際には、海外の顧客(ヨーロッパ人、アメリカ人、カタール人、ロシア人)、その国の方々、労働者として働きに来ているフィリピン人、インド人、タイ人に中国人と、いろいろな国の方々と一緒に働きました。言葉も文化も価値観も違う人たちと一緒に、一つの目的に向かって働くことは、簡単なことではありませんでした。

東京工業大学を卒業したからには、技術者として、地球規模で世の中に貢献できる大きな仕事をしたいと思っています。そして、そのためには自分の専門性を磨くだけでなく、専門外分野の技術の理解と、他国の人たちとの協力が絶対に必要であると強く感じています。

化学、機械、電気、土木、その他と様々な分野の人たち、そして中国、フィリピン、インドネシア、ヨーロッパ諸国、アメリカ等の他国の人たちと一緒に勉強し、問題解決のために自分が何をすべきか考えている国際開発工学専攻の学生が将来、地球温暖化問題のような地球規模の大きな問題の解決に一役を得るのではないかと期待しております。

(2009年3月執筆)