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研究・教育

 

ここでは、国際開発工学専攻の教育・研究分野について説明します。本専攻に関連する国際開発と工学の接点は様々な局面がありますが、例えば以下のような事例があるでしょう。

事例①: 社会を豊かにする無線通信技術の開発

2006年度のノーベル平和賞を受賞したバングラデシュ・グラミン銀行は、貧困層の農民を支援するマイクロクレジットを提供していることで有名ですが、このグラミン銀行の関連会社にグラミン・フォンという携帯電話会社があることも一部では有名です。このグラミン・フォンの商業活動は、一部の農村部のバングラデシュ国民に様々な情報へのアクセスを実現させ、生活水準の向上に貢献しています。こうした携帯電話の普及には、無線通信技術の存在が欠かせないことはいうまでもありません。国際開発工学専攻には、社会をより豊かにする無線通信技術の開発研究を行っている研究室があります。

事例②: 開発途上国で入手できる資材を活用した構造物工法の開発

開発途上国で道路や建物を建設する際、先進国の発想で前提となっている必要資材がすべて現地で入手できるとは限りません。その一方で、それぞれの途上国で比較的容易かつ大量に手に入れることができる資材もあります。こうした現地の資材を活用した構造物があれば、費用(コスト)の削減という観点から望ましいといえるでしょう。また、遠隔地より資材を輸入することに伴うエネルギー消費などを抑制できるという環境保全上の観点からも望ましいといえます。国際開発工学は、途上国内で入手できる資材を活かした構造物の施行方法、さらには完成後の維持・管理方法を開発することも大きな目標の1つです。

 

 
事例③: 有害物質の除去に貢献できる安価な環境技術開発

開発途上国では、生活排水処理にかかわる社会的インフラストラクチャーが必ずしも十分に整備されていないため、河川や湖沼の水質汚染が大きな社会問題となっています。また、急速な自動車の普及などに伴う交通渋滞などによって、大気汚染が深刻な問題となっている地域が多くあります。これらの問題の解決のためには、汚染物質を発生させない取り組みが必要ですが、同時に発生している汚染物質や有害物質をどのようにして取り除くかという課題も極めて重要です。国際開発工学専攻では、開発途上国の社会経済条件を考慮した(特に安価な)大気及び水環境改善のための技術開発を行っています。

 

事例④: プロジェクト・マネジメント

先進国や開発途上国などの場所を問わず、現代技術を社会に応用するプロセスは「プロジェクト」という名称で語ることができます。プロジェクトとは、設定された目的を実現するために必要な資材・人材・資金などを用意して、それらを効率的・効果的に利用して目的を達成する一連のプロセスです。例えば、大規模な橋梁の建設といたハード面のプロジェクトやコンピューターシステムの開発といったシステム面のプロジェクトもあります。こうした「プロジェクト」を成功に導くためには、プロジェクトの発掘、計画、設計、施工、監理・運営という一連のマネジメントに対する理解力とプロジェクトに関わる多数の人々を繋ぐ高度なコミュニケーション能力をもった人材が不可欠です。そこで国際開発工学専攻では、開発途上国の交通・通信・エネルギーなどに関する基本計画などを題材として計画立案のプロセスを学ぶ演習や、ISO(International Organization for Standardization, 国際標準化機構)規格やASTM(American Society for Testing and Materials, 米国材料試験協会)規格など、技術者の共通言語、すなわち国際技術スタンダードに対する理解を深める演習などを実施しています。また、実務としてプロジェクトを多数実施している民間企業の専門家を客員教員として迎え、現場を意識したプロジェクトマネジメントに関する教育・研究活動も展開しています。