ONLINE BOOK REPORTING :WEEK6 Chapter2 デジタル化による雇用の形態変化とその在り方

Reading report week 6: 宮内 太郎 (B4)

Chapter 2: Expanding opportunities part 3 (Page 130 ~ 135)

Chapter 2【デジタル化による雇用の形態変化とその在り方】

【概要】

これまでの歴史がそうであったように、産業革命などの技術革新とともに雇用形態も大きく変化してきた。こういった変化は経済的成長を促す一方で、時として労働市場に大きな混乱をもたらすこともある。

近年のデジタル技術の進歩もまた職業に確変をもたらし、雇用機会はより複雑になってきている。こうした影響は貧富の差がある国家間、ひいては年代や男女間など様々な状況下において異なって及ぼされている。本章では、異なる状況下においてそれぞれの雇用形態にどんな影響を及ぼし、どういったところを目指していくのか、また我々がデジタル技術とどう共存していくべきかを言及していく。

デジタル化など、近年の技術革新とともに、製造部門などの特に熟練技術を必要としない仕事(肉体労働など)が少なくなりつつあり、代わりにコールセンターといったサービス業では高い専門性がなくても雇用機会は増えている。ICT製造業は雇用を生み出すと考えられているが、それは特に高い専門性を持ち合わせた一部の先進国に集中している可能性が高い。雇用の創出というのはむしろデジタル技術やICT産業とは異なる部門から生じる場合もある。特に世の中で自動化・機械化が推し進められている中、専門性は必要としないが人との触れ合いが重要視される仕事(美容師など)の需要は高まると考えられているのだ。

これまでの歴史を振り返ると、技術革新により雇用形態は変化するものの、その数が足りなくなるようなことはなかった。例えば、18世紀の蒸気力の利用を中心とした産業革命により、馬車を引く仕事がなくなった代わりに鉱山労働者が増え、蒸気船や蒸気機関車などが産業の中心となった。こういった経緯から、アメリカの調査では2000年以降のデジタル技術による新しい雇用は全体のわずか0.5%であったが、今後新形態の職業が萬栄してくると思われる。

一方で、技術革新により労働市場が混乱する可能性もある。これは、多くの労働者、とりわけ一つの職業に就き続けた人は特に、新たに生じた仕事において必要とされるスキルを持ち合わせておらず対応できないからである。もちろん仕事の種類によってデジタル技術の適用性は変わってくるため、こうした混乱の広がりというのは国家間の経済・雇用構造の違いを映し出すでだろう。

こうした混乱は、先進国においてはより多くの仕事においてデジタル技術が普及されるためより大きくなると予想される。低~中程度の経済力を持つ国においても、成長のタイムラグがあるとはいえ、これから急速にデジタル技術が普及し徐々に混乱は大きくなるであろう。一方で、より貧しい技術採用どころではない国において、そもそも若い世代のために新技術を取り入れるべきか、働く世代の貯蓄を増やせるのか、といった合意を得る必要があり、政策、制度が適用されるためにより時間をかけながら混乱がゆっくりと現れるのである。

いずれにせよ重要なこととしては、デジタル技術による恩恵を最大化しかつ混乱への備えのために現在をうまく改善することである。その改善には教育システムの変化も含まれ、これは効果を得るのに長い年月を費やす非常に難しいことである。

【Making the internet work for everyone】

技術革新により雇用も収入も変化するが、雇用の分極化が必ずしも賃金の分極化が意味するわけではない。新しい経済スキルを利用し、ルーティーン的な業務でないと認知されている職業を勝ち取った人たちが需要を得られ高収入を得られるのである。

デジタル技術による恩恵を受けるのは、年配の労働者ではなく特に最新の教育を受けている若い世代である。若い人たちは職業や地位に関係なく新しいスキルを持つ傾向にあり、アメリカによると、女性や高等な教育を受けた人たちは特に変化に順応し高収入を得ることがわかっている。

特に高齢化社会が急速に進んでいる現代において、スキルの陳腐化を管理することが大切になる。デジタル技術化により、年配の労働者たちが兼ね備えている技術や経験の減価を加速させてしまう。若い世代は問題解決や学習の速さが重要視されている作業スキル(“流体的”能力)がより備わっており、逆に年配者は、経験や口頭でのスキルが要するとき(“固体的能力”)に優位になるとされている。各世代が持つ能力それぞれに利点があるので、陳腐化させるべきではない。

図1には、私が実際に行ったアーティストの年越しライブにおいて、2020年になった直後に撮影したプロジェクションマッピングの様子である。こうした謹賀新年を伝える形式も、書道家などの特有な技術を持つ人たちの協力の下行うものから、パソコンを使えれば誰でも壮大なものを創れるように遷移している。

【A policy agenda】

デジタル技術は福祉全体を改善し貧困を減らすことができるが、実効的な政策がなければ、多くの利益が利用されず、不平等が広がってしまう可能性がある。人々が平等に利益を得るためには、インターネットアクセへアクセスできるよう全ての労働者を支える必要がある。

こういった政策において最も需要な要素は、スキルの向上である。労働者は常にその時代のスキルを要求され、複数の仕事を続けるキャリアに備えるため、ライフサイクル全体を通して絶え間なくアップグレードしていく、また、インターネットの多大な情報を処理する能力が必要であるのだ。

図 1:謹賀新年を伝えるプロジェクションマッピング

【デジタル技術による女性の雇用機会】

デジタル技術は、これまで人的肉体労働を要した仕事が取って代わりルーティーン化していない仕事が増加したという点で、女性にとって雇用機会が増えまた社会的にも女性が力を持ち始めている。生産的資産にも手が届きやすくなり、女性の人的資本の向上につながるともいえる。デジタル技術はまた女性の声や女性が持つ店に影響をおよぼす。また社会メディアの台頭により女性が公的議論に参加しやすくなったり女性たちの声が届きやすかったりするようになった。さらには電子マネーやタックスシェアリングなど、ネット上での流通が盛んになってきたことも女性の経済進出を支援している。

こうした女性にとってもメリットが大きく見える一方、多くの国において、技術活用やICT部門での男女不平等はまだ広く存在している。男性より女性の方がスマホを持てず、インターネットへのアクセス権を持たない傾向にあり、ICT部門への女性の雇用機会は少なく収入も低いのが現状だ。こうした男女格差は、従来の女性は科学や工学を学ぶ機会が少ないといった教育方針が背景にあるといえる。

デジタル技術というのは男女別に異なる影響を及ぼす。こうした格差は、技術自体の設計に早い段階から女性を参加させることを含め、デジタル技術への介入がよりジェンダー情報を与えられれば、より効果的になるとされている。

さらには、女性は育児をする必要があるなど、家の外で働くことが受け入れられない、または手頃な価格で育児を預けられない場合、根本的な改革を遅らせることになりかねない。これら根本的な制約に対処することは、ジェンダーと全体的な経済的課題の鍵となる。

【雇用とコロナウイルスとの関係性について】

連日ニュースでも報道されているが、コロナウイルス蔓延により経済が大きく下降しており、大手企業でも倒産している例もある。そのため雇用の機会はますます減少している。日本では、総務省が29日発表した4月の労働力調査によると完全失業率は前月より2.6%上昇、アメリカでは、米労働省の4月の発表によると、失業率は前月の4.4%から14.7%となり、戦後最悪の水準まで急激に上昇した。幅広い産業で解雇が広がる中、宿泊・飲食・サービス業での失業者が特に多く、日本では仕事を持ちながらも仕事をしていない「休業者」が過去最多となった。

今後コロナが多少終息した後でも、人と人との距離を保つソーシャルディスタンスなどは残り続ける可能性もある。こうした背景から人どうしの接触を避けるために例えば接客の一部にロボットを導入するなど、さらなるデジタル技術の拡大が進み、対人関係の仕事が減少するなど雇用形態も変化していくことも考えられる。特に接客業などに勤めていた人たちにとって苦しい状況に陥ってしまうだろうが、そんな中でも新しい仕事を見つけなければならない。こんな事態だからこそ需要が増える職業もあり、例えば2020年5月29日の日本経済新聞によると、学研ホールディングス(HD)は、新型コロナウイルス感染拡大により失業者の増加などが懸念されているため、新たに介護職を1000人採用することにした。

多くの産業が大なり小なり損害を受けている中復興に向けて、我々は臨機応変に対応し、自分がやれることを見つけ経済活動をしていくべきだと考えられる。

【参考文献】

日本経済新聞2020年5月29日『4月の完全失業率2.6% コロナで休業者数が過去最多に』

https://www.nikkei.com/article/DGXLASFL29HAB_Z20C20A5000000/

財経新聞2020年5月10日『米国の失業率が戦後最悪に コロナの脅威』

https://www.zaikei.co.jp/article/20200510/565516.html

日本経済新聞 2020年5月29日『学研HD、介護職1000人採用 コロナ禍で雇用創出』https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59740450Z20C20A5000000/