Reading Report – Nikkei #4

新聞記事:
エジプト政変、周辺国に影
【2013年7月5日 日本経済新聞】

筆者: 花房 良裕

報告者: 市村 優明 (B3)

概要

3日に起きた抗議デモを発端としたエジプトのクーデターは同国の民主化プロセスに逆行する動きとなり、民主化運動「アラブの春」により独裁政権が崩壊した周辺国にも、影響する可能性がある。チュニジアとリビアでは議会選挙が実施されたが、依然として民主主義の素地はぜい弱。共通するのは“革命後”の生活水準が改善するどころかむしろ悪化しており、新体制への不満も高まっていることだ。

チュニジアの現状

20111
ベンアリ大統領が抗議デモをきっかけに亡命、独裁政権は崩壊しだが政情が不安定になる。
201110月 
イスラム政党「アンナハダ」が制憲議会選挙で勝利、中道左派の共和国評議会と組んで国づくりを進める。
20132
アンナハダに批判的な野党幹部が自宅前で暗殺され、大規模な抗議デモとストライキが発生、首相が辞意を表明する事態に。
201374
マルズーキ暫定大統領が記者会見でエジプトのクーデターを非難。自国への波及を警戒した。 2011年1月の政変後から経済は低迷し、独裁政権のタガが外れたことから民衆の不満が噴出しやすくなった。また、独裁政権下で抑圧されてきたイスラム系の政治組織が台頭し始め、都市部の世俗的な市民は警戒を強めている。

リビアの現状

201110
最高指導者のカダフィ大佐が殺害される。内戦時に欧米などが反体制派に供給した武器の回収が進まず、治安が改善しないままとなる。
20127
国民議会選挙を実施し、国民議会は実権を握っていた「リビア国民評議会」から権限を移譲される。しかし、今夏にも正式な政府を樹立するとしていた民主化の行程表は当初の構想より遅れている。
20129
リビア北東部のベンガジで駐リビア米大使が武装集団の襲撃を受け殺害される。

国の基幹産業となる油田施設では労働者がストライキを起こし、原油生産に影響を与えている。

アラブの春

2010年末から11年にかけて、中東・北アフリカ各国で起きた民主化運動の事。チュニジアで大規模デモが起こったことが発端で、SNSサイトを通じてエジプトやリビア、イエメン、バーレーンなど周辺国に瞬く間に波及した。チュニジア、エジプト、リビアでは長期独裁政権が崩壊し、シリアでは政権と反体制派の激しい内戦が続く。

若者を中心に経済格差や政治体制への不満が高まったのが大規模デモの背景にある。エジプトやリビアでは新体制の国家運営は不安定で民主化プロセスは遅れている。

感想

民主化運動の原動力は大きくても実際には民主化プロセスが遅れていることに、民主化の難しさを感じた。単純に独裁制を打破しただけでは民主化にはつながらず、民主化してから日の浅い国々は失政により経済の低迷を引き起こし、国民の不満を募らせ結果として民主化が遅れている。

「アラブの春」により独裁政権が崩壊した国々(リビア、エジプト、チュニジア、イエメン)はこの先どのようにして民主化を進めていくべきか、アラブ世界の発展において重要な要素になってくるだろう。