Reading Report – Nikkei #3

新聞記事:
シェールガス対日輸出 米、秋にも追加承認
【2013年6月25日 日本経済新聞】

筆者: 岸本まりみ 山本公彦

報告者: 市村 優明 (B3)

概要

シェールガスの増産により供給が増えている米国産天然ガスの対日輸出をめぐり、米エネルギー省が年内にも日本の事業体を追加で承認する見通しになった。同省は最短で約60日ごとに段階的な承認に動く公算が大きく、今秋にも対日輸出を追加承認する可能性がある。

米エネルギー省は5月17日、自由貿易協定(FTA)を締結していない国向けの輸出の先駆けとして、日本の中部電力、大阪ガスが契約するフリーポート社(テキサス州)のLNG加工、輸出事業を認可した。2017年を目処に輸出を始める予定。フリーポート社以外でも15件の事業体が承認を待っている。エネルギー省は原則的に申請順に審査する意向だ。

LNGの輸出には製造業を中心に「米国内のガスの価格が上昇する」といった懸念や環境団体の反発も根強い。そのため、米国の議会や政府では価格への影響を和らげるため、当面は輸出許可に60~80億立方フィートの総量枠を設けるのが妥当との見方が出ている。仮に総量規制の上限が100億立方フィートに満たなければ、フリーポート社(14億立方フィート)や過去に認可されている別の事業体の輸出量を積み上げるとわずか数件程度の大型事業で枠が埋まってしまい、対日輸出の認可が遅れる恐れがある。

米エネルギー省のモニツ長官は石炭からの脱却と天然ガス開発の推進を唱え、ガス輸出に積極的だが、米議会の慎重派議員からは5月の解禁後も「国内需要家への価格変動を避けるのが重要だ」(ワイデン上院議員)との発言が相次いだ。議会の動きを踏まえ、同長官は輸出による市場への影響を改めて調査すると述べている。

表.1日本企業が関わる米国のLNG輸出計画

日本企業が関わる米国のLNG輸出計画
名称(所在地) 事業主体 日本企業 調達予定量
生産開始予定
フリーポート(テキサス州) フリーポート 大阪ガス、中部電力 年間440万トン
2017年
コーブポイント(メリーランド州) ドミニオン 東京ガス、住友商事 年間230万トン
2017年
キャメロン(ルイジアナ州) センプラ・エナジー 三菱商事、三井物産 年間800万トン
2017年

(日経新聞 シェールガス対日輸出 米、秋にも追加承認 の記事より)

シェールガスとは

地上から2000~3000mの深さにある頁岩層(シェール層)から採集される天然ガス。頁岩とは砂より細かい泥が固まってできた薄くはがれるような性質(へき開性)を持った岩石である。在来型の天然ガスの埋蔵量はおよそ28兆m3で、可採年数は60年ほどといわれていたが、シェールガスは現在確認されているだけですでに埋蔵量は188兆m3にのぼり、可採年数は約400年と言われている。(http://www.youtube.com/watch?v=j4_cdK5U1Msより)

表2. 回収可能なシェールガスの埋蔵量上位十か国

Rank 埋蔵量(兆立方フィート)
1 中国 1,115
2 アルゼンチン 802
3 アルジェリア 707
4 アメリカ 665 (1,161)
5 カナダ 573
6 メキシコ 545
7 オーストラリア 437
8 南アフリカ 390
9 ロシア 285
10 ブラジル 245
世界の合計 7,299 (7,795)

(U.S. Energy Information Administration(EIA) http://www.eia.gov/analysis/studies/worldshalegas/ より)

※括弧内の数値はAdvanced Resources International (ARI)の見積もり

※データは2013年6月10日にEIAのホームページに掲載されたもの。

感想

記事にもある通り、アメリカの対日輸出は必ずしも積極的とは言えないようである。対照的に、ロシアは、アメリカが中東からの輸入に頼っていた状況を脱したことから中東がロシアの主な輸出先の欧州に流れ込んできたことを受けてシェアを落とし、日本に焦点を当ててきた。両国とどのように交渉を進めいくかが日本のエネルギー事情に大きな影響を与えるものと思われる。

また、シェールガスの採掘には水圧破砕法という非常に効率的な採集方法がアメリカにより開発されたが、その際に使用される化学物質が地下水を汚染し環境や人体に悪影響を及ぼすといった懸念がされている。シェールガス革命は手放しに喜ぶことができるようなものではなく、今後も様々なエネルギー源を模索してゆくことが重要な課題である。