Reading report – Investing in Development #1

Book Name:
Investing in Development – A Practical Plan to Achieve the Millennium Development Goals

By: Jeffrey D. Sachs, The UN Millennium Project

Reported by: Shintaro Oya (B3)

Chapter 1 / The Millennium Development Goals and why the matter

Summary

本書は、世界の貧困、教育、ジェンダー等の問題への取り組み方の指標として、現在、全国連加盟国がその達成を目指すことに合意している「ミレニアム開発目標(MDGs: Millennium Development Goals)」(以下MDGs)について紹介している。本章ではその導入として、設定するに至った経緯やMDGsの重要性が報告されている。

MDGsは2015年までに達成すべき目標として、8つのゴールと18のターゲット項目を掲げている。(ただし本書が出版された二年後の2007年に枠組みの見直しが行われ、ターゲット項目が3つ追加され、目標の数値もいくつか変更された。(表1は2007年にまとめられた方のもの。))また、各ターゲットには何をもってそのターゲットが達成されているかを計るいくつかの指標が設定されている。

2000年9月、国連ミレニアムサミットにおいて「国連ミレニアム宣言」が採択された。この宣言と、1990年代に開催された主要な国際会議やサミットで採択された国際開発目標を統合し、一つの共通の枠組みとしてまとめられてMDGsは形成された。

またその後も、2001年のドーハ・ラウンド、2002年のメキシコのモンテレイで開かれた国連開発資金開発国際会議における「モンテレイ合意」の採択や、同年の持続可能な開発に関する世界首脳会議等において、世界の開発におけるパートナーシップの枠組みが徐々に構成されている。

MDGsは、極度の貧困の中で生きる人にとっては生死の問題である。例えば、アフリカの極めて貧しい村では、治療の望みもなく、エイズや結核によって大人たちが死んでいる。女性は大家族の家計を支える為に重労働に就き、教育を受ける手段を持たず、まともな雇用や性に関する情報等を享受することが出来ないという悪循環に陥りやすい。農業者は、土壌がとうの昔に栄養不足で、家族を養う食物すら育てることもできない。農村から都市へ移る人々も、教育を受けておらず専門知識を持たない場合が多数のため、結局都市の中には移住者によるスラムが形成される。多くのスラムはギャングに支配されており、スラムの人口が増えるほど都市が持つ暴力の可能性を増加させる。

ただしこのような暴力リスクの減少というのは、往々にして国の所得を増加させる。開発への投資は、暴力の可能性を下げるという点で特に重要であり、開発戦略は暴力リスクを下げる効果があるかを考慮すべきである。

Reporter’s Own Thoughts

貧困削減というとMDGsでの「ゴール1」のようなテーマをイメージしていたが、それ以外にも様々な問題があり、またそれらは密接にリンクしているのだなと考えさせられた。また罰則がないため、強い目標意識と高いモラルが必要なこのような国際ルールに、全国連加盟国が合意しているというのは少し意外だった。

貧困削減という全体としての非常に大きな目標と、個々のゴール・ターゲットとを、どのように捉え、達成させていくのか、次章以降が興味深い。

(以上)

表 1 ミレニアム開発目標における8つのゴールと21のターゲット

ゴール

ターゲット項目

1.極度の貧困と飢餓の撲滅 1A. 2015年までに1日1.25ドル未満で生活する人口の割合を1990年の水準の半数に減少させる。1B. 女性、若者を含むすべての人々に、完全かつ生産的な雇用、そしてディーセント・ワークの提供を実現する。1C. 2015年までに飢餓に苦しむ人口の割合を1990年の水準の半数に減少させる。
2.普遍的初等教育の達成 2A. 2015年までに、全ての子どもが男女の区別なく初等教育の全課程を修了できるようにする。
3.ジェンダーの平等推進と女性の地位向上 3A. 可能な限り2005年までに、初等・中等教育における男女格差を解消し、2015年までに全ての教育レベルにおける男女格差を解消する。
4.幼児死亡率の削減 4A. 2015年までに5歳未満児の死亡率を1990年の水準の3分の1に削減する。
5.妊産婦の健康の改善 5A. 2015年までに妊産婦の死亡率を1990年の水準の4分の1に削減する。5B. 2015年までにリプロダクティブ・ヘルスへの普遍的アクセスを実現する。
6.HIV/エイズ、マラリアその他疾病の蔓延防止 6A. HIV/エイズの蔓延を2015年までに食い止め、その後減少させる。6B. 2010年までにHIV/エイズの治療への普遍的アクセスを実現する。6C. マラリア及びその他の主要な疾病の発生を2015年までに食い止め、その後発生率を減少させる。
7.環境の持続可能性の確保 7A. 持続可能な開発の原則を国家政策及びプログラムに反映させ、環境資源の損失を減少させる。7B. 生物多様性の損失を2010年までに確実に減少させ、その後も継続的に減少させ続ける。7C. 2015年までに、安全な飲料水及び衛生施設を継続的に利用できない人々の割合を半減する。7D. 2020年までに、少なくとも1億人のスラム居住者の生活を改善する。
8.開発のためのグローバル・パートナーシップの推進 8A. さらに開放的で、ルールに基づく、予測可能でかつ差別的でない貿易及び金融システムを構築する(良い統治、開発及び貧困削減を国内的及び国際的に公約することを含む。)8B. 後発開発途上国の特別なニーズに取り組む(後発開発途上国からの輸入品に対する無税・無枠、重債務貧困国(HIPC)に対する債務救済及び二国間債務の帳消しのための拡大プログラム、貧困削減にコミットしている国に対するより寛大なODAの供与を含む。)8C. 内陸開発途上国及び小島嶼開発途上国の特別なニーズに取り組む(小島嶼開発途上国のための持続可能な開発プログラム及び第22回国連総会特別会合の規定に基づく。)8D. 債務を長期的に持続可能なものとするために、国内及び国際的措置を通じて開発途上国の債務問題に包括的に取り組む。8E. 製薬会社と協力して、開発途上国において人々が安価で必要不可欠な医薬品を入手できるようにする。8F. 民間部門と協力して、特に情報・通信における新技術による利益が得られるようにする。

(出典:United Nations Millennium Development Goals – the United Nations)

(訳参照:外務省ホームページ)