Reading Report – Economic Policy #2

書名:
経済政策の政治経済学(The Making of Economic Policy)

筆者: Avinash K.Dixit

報告者: Lu Gao (M2)

第1章 / 政治過程としての経済政策決定

概要

1.2 政治経済学の実践的な考え方

 規範的政策分析に代わるものとして最も有名なのは、ブキャナンによって提唱された「公共選択」や契約主義的枠組である。政策条令(政策決定の結果)はブキャナンによると、定められた規定の中の形成過程において決められている。ただし、この段階では自由度は存在しないため、規範的分析を用いることができない。ブキャナンによると、各政策条令の決定を支配する規定をまとめたものが決められるときには、規範的な判断が必要となる。ゲームのルールを守る上で、改善策を探求する。ブキャナンの著作は特にヨーロッパにおいて、経済政策に取り組む人々に大きい影響を与えた。この分野での理論研究は信認の問題や特定のルールを守って組織との関係を続ける場合の便益に焦点を合わせてきた。

 公共選択[1]のアプローチは、政治過程を強調しているという点で重要であるとみなされているが、全体的には規範的アプローチが引き続き幅広い支援を得ているようである。実際の政策分析は、論理モデルか数量化、あるいは公的な政策理論であっても個々の政策条令を、引き続き規範的な基準で評価している。この原因は4つである。

  1. ブキャナンの考えが受け入れられれば、経済学者の仕事はほとんどなくなってしまう。経済学者は、より良い政策を提言するコンサンルタントとして活動するほうが多くの収入を得ることができ、名声を高めるとこができる。従って、プキャナンが正しいかったとしても経済学者は、規範的に政策介入が個々の状況では可能であり、自分たちはこの目的のために正しく公平無私な専門知識を持っている、と主張するのである。
  2. 現代の科学的な議論で勝利を得るためには、自分の一般的なアイディアだけでは不十分だという点である。もっと具体的な理論モデルによって裏付けられる必要がある。仮説が厳密に設定されることもなく、追加的な、おそらく矛盾した政策含意について徹底的に検討されようとも、口頭での議論に説得されてしまうのはあまりに安直である。規範的なアプローチではエレガントな理論モデルが用いられており、基礎的なモデルの開発は容易であった。対照的に、公共選択アプローチは概念から成っており、一般的な形式理論を欠いていたため、具体的なモデルが発展するためには時間が必要である。
  3. 経済学者が政治経済学の実践的な分析の結果を好ましく思わないことがある。これは彼らが不快に感じたのである。実際、公共選択アプローチでは、政策条令についての規範的な判断は、仮説を置いてそれを補強するような議論をするではなく、単に経済学者が政策研究における憲法の枠組みと政治制度の重要性を認識すべきことを主張している。情報や行動にかかるすべての制約が適切に考慮された場合には、このアプローチは、政治制度が経済問題に取り組む上で、きわめてよく機能しているという結論を導くことになるだろう。
  4. 政策の憲法と個々の政策決定過程を区別することは、現実的にはかなり難しい。政策のルールや条令は、考えの焦点を合わせるには便利であるが、現実では両者の区別はもっと曖昧で、ほとんどすべての場合において政策介入の自由度が少なからずある。
感想

経済政策提言する場合、最適な提案より、政府の憲法と法令の優先権を認めて、そのルールを守る上で提案すると、より良い結論を導くことになると考えている。また、中国において政策提言するときでは、単純な議論、アイディア提言をすることが多いが、論理性と説得力が不足している。論理モデル、数量化などを用いて、もっと実現できる政策提言する必要があると考えている


[1] 公共選択論:主として経済学における学問分野の一領域で、民主制や官僚制の下における政治過程を、ミクロ経済学的なアプローチで解く学問である。政治学と経済学の橋渡し的な分野である。特に、公共選択論では政治家や官僚を、自分の利益のために戦略的に行動するプレーヤーと捉え、彼らの社会・政治システム下での戦略的依存関係を分析する学問分野である。