ソーラーシステムってなに?

M2向井です.太陽エネルギーに関して興味深いニュースを見つけたので紹介します.

記事①「家庭で太陽光発電広がる」(読売新聞,2010年2月24日)

http://www.yomiuri.co.jp/homeguide/sumu/20100224-OYT8T00562.htm

 

記事②「ソーラーシステムの訪問販売のトラブルが増加」

http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20091007_1.html

<コメント>

記事①は,日本における太陽光発電システムの普及の様子を,様々な事例を用いて紹介しています.内容自体はPVに関心のある人には特に目新しくはないのですが,興味深いのは,記事の終盤にある,「強引な契約も」というサブタイトルの記事です.以下は記事①の抜粋.

 

『国民生活センターによると、太陽光発電設備などの「ソーラーシステム」に関する相談件数は08年度1437件だったが、09年度はすでに1584件(今月4日現在)。』

 

突然,「ソーラーシステム」という単語がカギカッコ付きで出てきています.(すこし昔のものですが)この件について詳しく知ることができるのが,記事②です.

 

記事②では,訪問販売の相談件数の増加が問題として取り上げられていますが,これが問題だと結論づけるのはすこし短絡的すぎると思います.国民生活センターの詳細な報告書を見ると,2007年の相談件数は1198件だったのに対して2008年は1418件と,すでに2008年から増加傾向にあります.また,母数である太陽光発電システム販売数が急激に増えていることを考慮すると,「相談率」自体はむしろ減少傾向にある可能性も大です.

 

相談件数は違う機会に触れることにして,今回のブログで取り上げたいのが「ソーラーシステム」の定義です.「ソーラーシステム」の名称を冠しているソーラーシステム振興協会HPには,以下のような記述があります.

 

『太陽エネルギーの利用方法には、ソーラーシステムや太陽熱温水器などのように熱的に利用するものと、 太陽光発電(太陽電池)のように、光のエネルギーを直接電気エネルギーに変換して利用する方法があります。』

(出典:http://www.ssda.or.jp/energy/index.html

 

つまり,太陽エネルギーには熱と光という異なるエネルギー形態があって,熱を使うのがソーラーシステムや太陽熱温水器,光を使うのが太陽光発電だ,ということです.

 

一方で,国民生活センターでは,(記事②のなかで)ソーラーシステムを『太陽光発電システムや、太陽のエネルギーを給湯だけでなく暖房などにも利用するシステム』と定義づけています.この後半部分の,『太陽のエネルギーを給湯だけでなく暖房などにも利用するシステム』というのは,おそらく,太陽熱を利用したシステムのことを言っているのでしょう(太陽光発電システムも,発電した電気でお湯を沸かしたり暖房に利用したりはできるのですが).つまりは,太陽(ソーラー)のエネルギーを利用しているシステムは(光も熱も)すべてソーラーシステムだ,という考え方です.

 

(・・・余談ですが,英語でSolar Systemは,太陽系のことを指します.当然ですが,ソーラーシステムは和製英語です.出典=>http://en.wikipedia.org/wiki/Solar_System

こういうところから分かるように,現在,「ソーラーシステム」という名称で,さまざまなものが意味されています.私は,このような定義のあいまいさから生じる問題というのがあると思います.一番問題なのは『消費者にとって分かりにくい』ということです.

 

現在化石燃料を利用している組織や消費者の視点から考えると,自然エネルギー技術の導入までに,3つのステップが必要です.①まず,(太陽光発電やら風力発電やらの)自然エネルギー技術の存在を知り,ある程度(光やら熱やら電気やらの)しくみを理解し,②次に,現在利用している化石燃料とこれら自然エネルギー技術のメリット・デメリットを比較し,③その上で,自然エネルギー技術を購入しよう!と決断する,という3ステップです.一般的な消費者は,案外用心深いので,この3ステップをしっかり踏まないと,「目新しい技術の購入」という行動は起こしません.(当然,ステップ③での消費者ごとの評価基準は異なります.完全におカネ重視の人もいれば,エコ重視の人もいます)

 

逆に,このステップをしっかり踏まずに購入してしまった場合,(たとえば,訪問セールス等で購入してしまった等)のちのち消費者は後悔することもあります.結果として,消費者の不信感をあおり,国民生活センターの相談件数が増え,メディアがそれを取り上げ,市場拡大を止めてしまう要因になります.

 

「目新しい技術」の名称の定義があいまいな場合,たとえば,賢い消費者が自分でソーラーシステム,太陽熱のことを調べようと思っても,それが時間効率的にできず,3ステップを進むことができません.太陽光発電の普及はどんどん加速している中,経済的にも環境的にも優れている太陽熱技術の普及がなかなか進まない理由のひとつは,ここにあると思います.

 

私の個人的意見としては,政府もメディアも,「ソーラーシステム」という名称は(太陽系を指す場合をのぞき)今後使わないほうがよいと思います.

 

しかし一方で,「太陽のエネルギーを給湯だけでなく暖房などにも利用するシステム」というのも名称なのか説明なのかわからないので,はっきりと「太陽熱システム」とか,簡単に呼べばいいとおもいます.

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