アーヘン留学 第4回 ドイツの電力市場

Sector

(出典: Sector Inquiry into Electricity Generation and Wholesale Markets, 2011, Bundeskartellamt)

M1の片谷です。上図はドイツの電力市場をまとめたものです。

現在、ドイツには4つの大きな電力会社(E.ON, RWE, Vattenfall, EnBW)が存在し、それぞれに対応して4つの大きな送電会社(Tennet, Amprion, 50Hertz, TransnetBW)が運営されています。また、1998年に電力自由化が進められ、現在では多くの発電事業者、配電事業者が存在しています。

電力の卸売市場には相対取引(OTC: over the counter)および入札による取引(Exchange)があり、さらにそこからDerivatives markets(Future, Option market)とSpot market(Day-ahead, Intra-day market)に分類されています。またExchangeはEEX(Europian Energy Exchange: 欧州電力取引市場)で行われいますOTCおよびFuture marketで扱われた電力量は2008年時点で約88%であり、Spot marketではおよそ12%の電力量が取引されました。

私が焦点を当てている市場はSpot Market(Day-ahead market)です。Spot marketでは売り手側(供給)と買い手側(需要)両方の入札により翌日の電力価格が決定されています。

どのようにして売り手側、買い手側は入札価格を決定しているのでしょうか。電力市場における価格形成のメカニズムを示す例としてよく用いられているものが下図に示したMerit Orderです。これは電力価格が各発電機の限界費用(Marginal cost)および需要によって決められるというものです。

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(出典: RWE)

Merit orderから、原子力発電よりも限界費用が安い発電方法があることがわかると思います。これらは風力発電や太陽光発電といった燃料を必要とせず、自然エネルギーを利用して発電しているものです。つまり、風力発電や太陽光発電からの発電量が多ければ多いほど、市場で取引される電力の価格は低くなるということを示しています。

さらに、2008年からEEXではマイナス価格による入札が許可されているため、風力や太陽光からの発電量が多く、電力需要が低い場合には電力価格がマイナスで取引される(売り手側がお金を払って電力を買い取ってもらう)という事態が実際に起こっています。

日本ほど買い取り価格が高くはないものの、ドイツにおいても再生可能エネルギーは固定価格で取引されています(価格の詳細は阿部研究室HPのPolicy Reviewを読んでみてください)。これらの固定価格と市場で取引された電力価格との差額は最終的に賦課金として電力最終消費者が支払うことになっています。2012年で3.592ct/kWhだった賦課金は2013年は5.277ct/kWhと値上がりました(参考: http://www.germanenergyblog.de/?p=10548)。

再生可能エネルギーがさらに増えていく今後、これらの問題に対してどのような対策が必要なのでしょうか。

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