Reading report – Investing in Development #4

Book Name:
Investing in Development – A Practical Plan to Achieve the Millennium Development Goals

By: Jeffrey D. Sachs, The UN Millennium Project

Reported by: Shintaro Oya (B3)

Chapter 4 / MDG-based poverty reduction strategies

Summary

貧困削減の責任を背負いたくない国家の政府や国際的な援助国というのは、いつもゴール達成への意識を和らげようとしてしまう。それは特に、ゴールの達成へ向けて政策の大きな方向変換や金銭的な関与が必要な際に起こり易く、また、劇的な成長を要するゴール達成は非現実的だと思われているからだ。しかし、ゴール達成へ向けた実践的なステップは、国際社会からの持続的な支援と協調しながら、細かく調査分析・計画され、適切な焦点を持って活動が行われることが可能であるし、また、そうされるべきものである。

貧困削減は途上国の一義的な責任であるが、貧困国でゴールを達成するのには、貧困の罠を打破するための政府開発援助の大きな増加が必要である。(本書を出版した)国連ミレニアムプロジェクトは、低所得国に、主要な投資に更に予算を注ぎ込むことで、ゴール達成へ向けた国内の資金の動員量を増やすことを促してきた。そして、適切な統治を行っているものの国内資金が不十分である国には、援助国が長期的な援助とその増加を遂行することを要求してきた。

モンテレイ合意で示された協調関係を実行するために、ゴールを達成するための具体的で組織的な戦略とそれに必要な協調融資の方法について、途上国が将来像を描きやすい基本的なアプローチが国際社会には必要である。そのためにも、途上国それぞれが、ゴール達成に対して十分意欲的な国家開発戦略を策定し実行するべきなのである。そして、ゴールの達成がすでに現実味を帯びているような国では、より野心的な「MDGプラス」戦略が策定されることが望ましい。

MDGへの真剣な取り組みには、開発の実践において大きな転換が伴う。国家は、「ゴールへの発展を加速させる戦略」というより、「ゴールを達成するための戦略」が必要である。つまり、「現在の状況下で、どれだけゴールへ近づけられるか」ではなく、「ゴール達成の切迫した状況と繰り返される国際的な関与を仮定したとき、投資と政策のどのような連鎖が要求され、財政等でどのような条件が必要なのか」を考えるべきだということだ。この考え方に基づくアプローチの指針としては、2015年までに必要な政策・投資に着目してMDGsのターゲットを逆算するというものがある。すなわち、(1)まず、国は可能な限り多くのデータを集め、極度の貧困の動態と要因を把握する。(2)次に、ゴール達成に必要となる具体的な公共投資を見極めるために、ニーズアセスメントを行う。(3)その評価を10年間の活動の枠組みへ転換する。(4)また、10年間の計画の中には、3年から5年の中期的なMDGベースの貧困削減戦略が詳細に練られてなければならない。といった具合である。そして重要なのは、この10年間の枠組みと3~5年の貧困削減戦略に、透明性、人権、ベンチマーキング、結果に基づく運営、といった公的部門の運営戦略や、また、経済成長を促進し、長期的には途上国を経済援助から「卒業」させるような民間部門の戦略を含めるべきだということである。

多くの低所得国では、国家貧困削減戦略はPRSP(Poverty Reduction Strategy Paper:貧困削減戦略ペーパー)において表されている。ちなみにPRSPとは、低所得国が主体性を持って策定する貧困削減のための国家戦略であり、「国内の出資者と世界銀行やIMFを含む海外の開発パートナーが関与する参加プロセスを経て作成される(IMFホームページ)」。PRSPは、ゴール達成のための強力なツールだが、目標と計画期間を含んだ目的を忘れずに入れる必要がある。そして、まだPRSPを使用していない国では、国際社会からの全力の支援を受けて、MDGベースのPRSPを策定すべきである。

MDGベースの貧困削減戦略を実際の予算編成過程と結びつけるためには、国際金融機関や二国間援助を含む国際社会全体で、各国が中期支出枠組みを発展させることができるよう支援すべきである。この過程においては順序が大事であり、「支援を受けてから戦略を策定する」のではなく、「支えとなるマクロ経済の枠組みデザインの後にMDGに対する実際の投資の必要性を評価し、戦略を立てて支援を受ける」といういわば逆の順序で段階を踏んでいく必要がある。

MDGベースの貧困削減戦略は、国内外の全ての主だったステークホルダーに開かれたものでなければならない。二国間や多国間での援助国、国連機関、地方当局、女性団体を含む国内の市民社会におけるリーダー達を招いて、政府はMDG戦略グループを、健康や農業生産といったテーマごとのグループの集合体として形成すべきである。そして活動するにあたり、開発パートナーと市民社会のリーダー達は、各グループの焦点を、途中や何かが発覚した後ではなく初めに、明確に示しておく必要があり、国連の各機関や国際的な金融機関は、各国の求めに応じて重要な助言者でなければならない。また、全体のコーディネーターは、各グループの活動が適切にまとめられたものだということを保証すべきであり、すなわち、日本でいう財務省のような省庁とより協力的に活動させることで、その戦略が国の実行予算と結びつくものだということを示すことが重要なのである。

Reporter’s Own Thoughts

本章では、MDGsの達成のために、国レベルでどのような通念を持って戦略を立てていくべきかを述べられていた。「よりゴールへ近づくための算段」ではなく「達成を前提とした逆算」が必要であり、また、国レベルでの考察をするためには一つの雛形に当てはめるのではなく、状況に応じた慎重な議論をしなければならないというのは、非常に難解で多くの時間を要すように思う。より良い開発を行うために適切な戦略を練るのは重要なことであるが、それに時間を割きすぎた余り、開発が難しくなるようなことがあってはならず、バランスが大事だと感じた。