BMW技術視察

BMW技術視察

 インドネシアのスラバヤ大学のYunus先生と、BMW技術の見学に行ってきました。BMWはBacteria Mineral Waterの略で、通常の排水浄化システムに、岩石によるミネラル成分の補給による微生物浄化作用の向上を加えたものです。森林の湖沼などで起こる自然の浄化システムを参考に考案されたもので、既存の人口的な処理方法と比べて環境負荷が小さいことが期待されているそうです。排水のリサイクルによる節水への貢献とともに、微生物による活動が高まった生物活性水(BM水)は養鶏、酪農、水稲、野菜栽培などのいろいろな用途で育成効果を高めるなど有益に作用します。

BMW技術を取扱う企業の磯田有治さんと星加浩二さんに同行させていただき、BMW技術を扱う企業、農家の4軒にて研修させていただきました。

一件目は埼玉生協の流通所で、物資の収集、運搬を行っている場所です。通常の生活排水の一次処理施設に加えて、BMによる浄化システムによる排水のリサイクルを行っています。リサイクル水はトイレに利用され、施設全体の水使用量を1/3まで削減することに成功したそうです。節水とは別に導入のきっかけの一つとなったのは、環境への配慮です。塩素や他様々な薬などで浄水処理された水は排水された先の環境、生態系に悪影響を及ぼしますが、ミネラルと微生物の作用を利用した生物活性水にはその悪影響がなく、生態系への影響配慮の観点から導入されたそうです。

図1図2

 

写真左は埼玉コープ流通所の外観です。排水処理施設は駐車場の、撮影時僕が立っていた場所の真下にあります。120名規模で利用しています。

写真右は実際に再生水を利用したトイレです。かすかに黄色の着色がありましたが、無味無臭です。尿に含まれる色素の成分は処理されないためこのような色が残るそうです。COD数値は低くないが、BOD数値は低いとおっしゃっていました。

図3

浄化槽の上で記念撮影。写真右から星加さん、磯田さん、Yunus先生。

 

二件目は農家の田中さん宅に伺いました。ここでは水の再生利用先をトイレに限らず、水稲、畑、養鶏、生活水など幅広い用途に活用しています。節水のみならず、生活の向上にBM水を大きく活用しているように感じます。ソーラーパネルも配備しており、電気、水、食の面で、質の向上とともに自給自足を達成した持続可能な生活の見本のようでとても興味深かったです。

図4図5

写真左は岩石による二次処理を行う水層です。大きなドラム缶の中に岩石を沈め、一次処理水を中部で循環させることにより、生物活性水をつくります。写真手前のポリバケツは活性炭と石によるろ過装置です。生物活性水をここに移しさらにろ過することで、風呂や洗面などに使う生活水を作るそうです。ミネラルが豊富なため、温泉のような健康効果があるといいます。羨ましいです。

写真右にあるように、生物活性水の一部はそのまま水田に向かいます。これによって収穫量が3倍になったという驚くべき変化に加え、藻の生育の向上による雑草の抑制なども利点としてあるそうです。

図10図12

少し降ったところに養鶏場がありました。ここでも生物活性水は鶏の腸内環境をよくすることで便の臭いを抑えます。実際養鶏場とは思えないほどに不快なにおいがありませんでした。水は高低差を利用して供給しているそうです。小さなことですが、一つ一つに田中さんの意志や知恵のようなものを感じます。

見学後にここでとれた卵をいただきました。市場では一つ500円で、違いの分かる人からしたらすごいものらしいです・・・確かに黄身の色も違い、味も濃くとてもおいしかったです。

三件目は農業を営む米川さん宅です。生物活性水とBM堆肥を使った無農薬、無化学肥料によるさつまいも生産と販売を行っています。生物活性水は根に作用して、より健康で質の高い作物を作るそうです。自然に免疫を高めるため農薬もいりません。乗用耕耘機を自ら改造して前部にBMタンクを取り付けることで、自動的に散布できるようにしたそうです。発想もそうですが、自分で作ってしまうところもすごいですね。

図13 図14

写真左は米川さんのBMWタンクです。田中さんのタンクと違い、岩石は沈める型でなく吊るす方式のようです。人によって個性があるようでおもしろかったです。5000リットル容器で生活排水が一日100リットルなので、約50日周期で入れ替わる形です。

実際に焼き芋をいただきました。種子島の安納芋のように甘く、柔らかく、とても味に深みがありました。そしてもちろん無農薬であるがゆえの健康さや安心感もありました。農家として新しい技術の導入に関心を持ち、自身のブランドを作って成果を上げる姿に力強さを感じます。

四件目に伺った清水さんの農場は、酪農も配備しています。清水さんは田中さん、米川さんにBMW技術の導入を指導した方で、現在はBMW技術のさらなる向上に加え、竹パイダーから作った堆肥の発酵過程で得られる熱量を取り出して利用できないかと実験を重ねているそうです。同時に、最新の分析機器を購入して、野菜の健康さの源を様々な成分分析をもとに明らかにする取り組みも現在行っているそうです。発想力や行動力に満ちていて、常に新しいアイデアの研究に取り組んでいるらしいです。

図6図7

写真右は竹パウダーを発酵させて肥料にしているプロセスです。発酵中は50~60℃の熱を約4か月間保っているそうで、その潜在熱量の高さがうかがえます。清水さんは竹をエネルギー源とする発想はなんとパンダから得たそうです。パンダが竹のみからあの巨体を維持していることから、竹はそれだけのエネルギーを持っているに違いないと。BMW技術といい、発想の源として自然界を観察する眼というものは大切なのかもしれません。

僕は農業の知識が疎かったのですが、発酵のこと、植物の成長に必要な栄養素のことなどをとても丁寧に教えていただきました。

図8図9

研修全体を通して、一日で四軒も回る機会をいただき、磯田さん、星加さんそしてYunus先生に感謝しています。技術をとっても、その応用方法や導入背景にしてもすべて興味をそそられるものばかりでした。農業など自分の勉強不足ゆえに理解できずご迷惑をかけたときもありましたので、もっと勉強していこうとやる気ももらいました。

とても実りある研修になりました!

海宝(B3)