誤解だらけの日本林業-知られざる大きな可能性-

M1の栗山です。

日経ビジネスのサイトに以前から気になる特集があったのですが、まとめる時間が無かった(?)ので今回一気に整理してしまいます。

この特集は現在6回分あります。

誤解だらけの日本林業(By 日経ビジネスOnline)

  • 第1回 林業は衰退産業という“ウソ”
  • 第2回 林業は途上国の産業という“ウソ”
  • 第3回 日本に林業の専門家がたくさんいるという“ウソ”
  • 第4回 日本は「木の文化の国」という“ウソ”
  • 第5回 材価が下落したから儲からないという“ウソ”
  • 第6回 バイオマス利用が進んでいるという“ウソ”

http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20100216/212806/

どの記事も目から鱗の内容が書かれていて今後の研究に大いに役立ちそうでした。

結論からいうと、日本の森林資源は利用価値があるが、現在の林業の構造が問題なため、儲からない産業になっているということ。その原因を各回で細かく解説しています。このブログでは各回の要点をまとめます。

個人的には、日本の大学で林学がどんどん衰えていて日本の林業が分かる人材が少なくなっているというところに興味を魅かれた。

おそらくこの人材とは林業を経営的に考える人材であろう。今までは森林の機能や林業機械の研究、木材の利用法など細部の研究が多く、全体論を“経済面から”研究している機関が少ないのではないか??今後の研究対象になるとともに、私の研究室でテーマにできそうな部分である。

第1回 林業は衰退産業という“ウソ”

  • 政府は2009年12月に「新成長戦略」の一つとして現行20%にとどまっている木材自給率を「10年後に50%に拡大する」と発表している。
  • 林業衰退の原因のひとつして外材の供給があげられているが、実際は戦後資源を採りつくし、供給が追いつかなくなりその穴埋めを外材が担ってきたのが現状である。実際に輸入の3分の2は先進国からであり、急峻な地形の産地も含まれている。
  • 供給面では森林面積2500万ha、森林蓄積50億立方メートルと世界トップクラスのりょうである。需要面では林業の商品である丸太は重量が重く、輸送コストがかかるので産地が近いほど有利である。加えて、日本は世界3位の木材消費国であるので需給両面で日本の林業は優位性を持っている。
  • 求められているのは全体の制度設計、つまり、工程管理や人材教育である。補助金を出すだけでは、一部が潤うだけで全体の改革にならず状況は改善しない。将来性を考えた戦略が必要である。

第2回 林業は途上国の産業という“ウソ”

  • 世界の2/3の木材生産および加工は先進国におけるものである。発展途上国の多くの林業は必ずしも持続可能な森林経営が行われているわけではない。
  • 日本の林業の生産性は欧州の20分の1である。原因は機械化の遅れである。日本の林業用機械は基本的に土木工事用の車両を改造したものが多く、急峻な斜面での効率が落ちる。さらに。、各機械の生産性が異なるため、生産性の低い機械がネックとなり全体の生産性が上がっていないのが実情である。
  • その上、作業効率を上げようと無理をするため、木を傷つけ、土壌を痛めるという悪循環に陥っている。
  • 林道網の整備が必要である。ドイツもスウェーデンに林業を学び改革した。日本も習うところがあるのではないか。

第3回 日本に林業の専門家がたくさんいるという“ウソ”

  • 現在の森林所有者の大半は相続で山林を所有しており、林業とはまったく別の仕事についている。彼らが林業の担い手になるのは困難である。
  • ドイツでは専門職の公務員が1人当たり1500~2000ヘクタールの森林を担当している。彼らが所有者をサポートしている。フィンランドでは森林所有者が全員森林所有者連盟に属しており、全国統一した組織を形成している。実際の木材生産は企業がするため、こうした森林管理の専門家は長期な視点から林業を監督する重要な位置づけとなる。
  • 日本の森林組合が民有林の7割りをカバーしているが実際の事業は、林業校舎や国の緑資源機構、市長村有林、国有林といった公共事業ばかりであった。民有林にはほぼ介入してこなかった。そのため、森林組合の経営力は極端に落ちていて、日本の森林管理をする能力は足りない。さらに大学からも林学が消滅し、林業の専門家がいないのが日本の現状であるといえる。
  • 林業を一元的に指示できる有能な人材が求められている。

第4回 日本は「木の文化の国」という“ウソ”

  • 日本の古来の木造建築はまさに木の文化の象徴であるが、現代の家は木質ボードによる大壁工法により木の家の質感が失われている。一方ドイツ家はコンクリートやレンガ造りの家が多いものの、屋根や家具はふんだんに木材を利用し、居住性を高めるともに、家そのものの価値も高めている。つまり長期的に利用されている。
  • ドイツでは適正な森作りのおかけで太い木を使えるが、日本は現状では集成材などによる細い木を使わざる得ない。太い木を育てられる森を作ることができれば、林齢、樹種など多様な森を作ることができ、環境機能に優れた森を作ることができる。
  • これからの日本はまず、細い木を利用しつつ価値の高い大径材を育てることであろう。

第5回 材価が下落したから儲からないという“ウソ”

  • 典型的な木材生産経費は、現場技術者3人として年間の人件費が1500万円、林業機械の購入価格5000万円、その機械の償却やメインテナンスを考えると年関係費はおおむね3000万円になる。また、立方あたり木材生産経費を3500~4000円として木材生産の採算ラインは7500~9000立方メートル、間伐面積で100~200ヘクタールといったところに落ち着く。これらを実現した良い例が日吉町森林組合である。日吉町森林組合では伐り捨て主体の間伐の時から、境界の確認を独自に行いながら路網を開設してきており、その施業結果についても、境界を確認した地図情報と所有者ごとの施業履歴などについて表計算ソフトを使ったデータベース化も怠りなくやってきているなどで、現代林業を行っていくために最も重要な基礎インフラを着実に整備してきた。
  • 日吉町森林組合の経営手法は普遍性が高く今後の日本の林業の経営のあり方のモデルとなりうる。つまり、森林所有者に変わる経営の担い手が森林のグランドデザインを描き、事業量を確保した上で、路網を構築しつつ林業機械を駆使することで効率的な木材生産を行おうとするものである。
  • 一方で、毎年何度も研修が開かれているのにも関わらず、状況がよくならないのは、公共事業で楽に森林組合を存続させることができるような予算が執行されているという政策に問題がある。

第6回 バイオマス利用が進んでいるという“ウソ”

  • ドイツの再生可能エネルギーの市場規模(再生可能エネルギー売り上げ及び設備投資・維持管理)は今では約4.7兆円、雇用規模は30万人となっている。再生可能エネルギーの導入がいかに地域経済・社会に貢献しているかが分かる。土率の再生可能エネルギーの内訳として木質バイオマスが42%である。
  • 林野庁の試算によると、伐採されたもの、運び出されないで林地に捨てられた「林地残材」が年間2000万平方メートルあり、これはドイツの木質バイオマスの総利用量の8割に相当する。
  • 日本のバイオマスの実情は、木材ペレットをわざわざ丸太からつくったり(本来ならば切りくず等からつかうべき)、非常に単価の高いペレットを製造しそれを補助金でまかなう、バイオマスの発電プランと補助金の助成によち建設するも燃料不足で稼動停止などお粗末なものばかりである。
  • バイオマスの普及にはまず熱需要を開拓することである。主な開拓先としては、ホテル・旅館、園芸ハウスなどの石油を大量に消費している施設が挙げられる。
  • 海外の興味深い成功例としてはオーストリアのギュッシングである。15年前までは「オーストリアでもとtも貧しい」といわれる寒村であったが、地域に豊富に存在するバイオマス資源の活用によってオーストリア有数の富める町になった。

Reported by Akihisa Kuriyama  栗山昭久

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