Reading report – Investing in Development #2

Book Name:
Investing in Development – A Practical Plan to Achieve the Millennium Development Goals

By: Jeffrey D. Sachs, The UN Millennium Project

Reported by: Shintaro Oya (B3)

Chapter 2 / Where we stand with only a decade to go

Summary

1990年からの10年における経済成長は、多くの人を貧困からすくい出してきた。ただし、当然良いことばかりが起きているわけではない。本章は、世界の各地域での貧困やMDGsの進展状況を報告している。

ただし本書が出版されたのは2005年であり、MDGsに修正が加えられた2007年の2年前である。そのため、ここでは進展状況がどの程度遅れていたのか、という視点で見てみることにする。

各地域や国の、内外に関わらず、途上国では発展に大きな差異が生じる傾向がある。ほとんど発展が進んでいない地域がある一方で、その逆が起きている地域もある。経済が停滞している国が存在する一方で、多くの国が成長を遂げてもいる。そして最貧国でもその多くが徐々に経済成長を見せてはいるのだが、貧困を劇的に減少させるには至っていない。

国内での差異もまた多様に存在する。貧困状況の「国よりも小さな単位」での違いは、地形的、社会的、あるいはその他の、成長から排除させられるに足る何らかの要素を反映している可能性があるからである。

国連ミレニアムプロジェクトは、この「国よりも小さな単位での違い」を識別するため、各地域レベルでの、貧困の指標の核である「乳児死亡率」と「幼児栄養疾患」のデータを用いて、貧困世界地図を作成した。それによると、世界で最も貧しい地域は、サハラ砂漠以南のアフリカ、中央及び南アジア、そして南米のアンデス地方であった。

国以下の単位の地域での差異の多様性も非常に重要ではあるが、より大きな単位での傾向もまた、多くの国に共通する課題や状態を反映する重要な要素である。ここからは、世界の10の大きい地域ごとに、MDGsの達成へ向けた状況と、本書が2004年の国連統計部及び国連経済社会局人口部のデータを基に作成した表を記す。

1. 北アフリカ

1990年以降、北アフリカでは緩やかな経済成長が続き、ターゲット1C.「飢餓に苦しむ人口の割合を1990年の水準の半数に減少させる。」の達成は軌道に乗っている。しかし、全てで正しい方向へ向かうためには、更なる加速が必要である。

2. サブサハラ以南のアフリカ

この地域は、上記の通り世界の最貧地域であり、ほぼすべてのゴールの達成が軌道に乗っていない。1990年から2001年の間で、一日当たり1ドル以下で生活する人の数は2.27億人から3.13億人に膨れ、貧困率は45%から46%に上昇した。3人に1人が必要最低限な食事を得られず、5歳以下の死亡率は1000人当たり174人、初等教育の入学率は62%といずれも世界最悪である。

3. 東アジア

近年の中国の経済成長に伴い、東アジアでは低所得者と飢餓が急激に減少し、ジェンダーの平等、教育、児童の生存率で改善が見られた。しかし、それでもこの地域には極度の貧困にある孤立地域があり、いまだに多くの貧困人口を抱えている。また、急速な工業化と農業強化に伴い大気汚染が深刻化しており、この地域の大きな課題となっている。

4. 東南アジア

東南アジアでは低所得者、飢餓、乳幼児死亡率、ジェンダーの平等で、ゴールの達成が軌道に乗っている。ただし地域内での進展状況に差があり、タイやベトナムで急激な進展がみられる一方、カンボジアやラオスは多少足踏みをしている。土地を占める森林の割合が1990年から2000年の間で5%減少しており、急激な森林伐採と沿岸部及び海洋の環境破壊が深刻化している。

5. 南アジア

南アジアでは、インドの急激な経済成長により大幅に貧困が減少した。しかしなお、この地域は他地域に比べて多くの貧困人口を抱えており、多くのゴールが達成できそうにない。中等教育における男女比は、男子1に対して女子0.77であり全地域で一番低い。また、ほとんどの国が現代技術・サービスへのアクセスを欠いており、電話加入者は100人当たり5人しかいない。

6. 西アジア

ここでは、通常中央アジアに属される国々も西アジアに含めている。この地域は所得の貧困や飢餓が進行しており、ジェンダーの不平等に対する改善も遅々としている等、多くのゴールが達成できそうにない。

7. オセアニア

オセアニアは、多くの小島から形成されている。この地域もまたほぼすべてのゴールを達成できそうになく、中には後戻りしているところもあるほどである。MDGsの進行状況がここよりもひどいのは、サブサハラ以南のアフリカ地域しかない。中でも、改善された水の提供を受けられる人の割合は52%であり、これは全地域最低である。

8. 中南米カリブ

この地域は1990年以降ほとんど経済が成長しておらず、貧困人口と不平等がしつこく残っている。しかし、飢餓、教育、ジェンダー、そして子供の健康のゴールに関しては比較的良くやっている国もある。この地域の中でも、中米と南米のアンデス地方には貧困が集中しており多くの課題を抱えている。

9. ヨーロッパのCIS(Commonwealth of Independent States: 独立国家共同体)加盟国

CISとは、ソビエト連邦が崩壊した際、構成していた国のうちの12か国によって結成された国家連合体のことである。(ただしグルジアが脱退したため、現在の加盟国は11か国となっている)

1990年代の、特に前半、CIS加盟諸国では貧困と飢餓の増加に伴い、経済が崩壊した。そのほとんどが今では発展を遂げてはいるが、中には立ち直れていない国もある。結核とHIV感染者の急激な増加と、高い妊産婦死亡率により、健康のゴールを達成できない国がいくつかある。また、清潔な水や衛生へのアクセスと高レベルな産業汚染が深刻な問題として存在する。

10. 中央アジアのCIS加盟国

中央アジア諸国は、ソビエト経済崩壊後に貧困レベルの増加を経験した。1990年以降、貧困人口率が数カ国で大幅に上がった。栄養不良、乳幼児死亡率についても同様である。また、HIVと結核の感染が増えており、MDGsの健康に関連する指標は地域全体を通じて悪化している。

Reporter’s Own Thoughts

本章では、2005年時点でのMDGsの達成見通しが報告されているが、その状況は地域によって大きな差があった。これらを見て気づいたのは、進行状況がある程度経済成長に依存しているということである。経済が成長しているとされる地域では多くのゴールが「on track(順調)」であり、そうでない地域では多くが「off track(順調でない)」であった。

そうなると、今のように、全ての国の進行状況を同じ基準ではかるのではなく、その国ごとの経済状況に応じた、国レベルでのゴールが必要なのではないかと考えてしまった。
次章では、MDGsの達成に不足が生じている理由が紹介される。本書がどのような事をポイントとして挙げるのか、興味深い。

(以上)

表1 10の地域におけるMDGsの進行状況

1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 10.
1a. × × × ×
1b. × × × × × ×
2a. ×
3a.
3b. ×
3c.
3d. × × ×
4a. × × × × ×
4b. × ×
5a. × × × ×
6a. × × × × ×
6b. ×
6c. × × × ×
7a. × × × ×
7b. × ×
7c.
7d. ×
7e. × × × × ×
7f. × ×
8a. × × × × × × ×

○:達成又は順調  △:進展はあるが不十分  ×:進展なし又は悪化  空欄:データなし

(本書をもとに筆者作成)

表2 地域

地域
1. 北アフリカ
2. サブサハラ以南のアフリカ
3. 東アジア
4. 東南アジア
5. 南アジア
6. 西アジア
7. オセアニア
8. 中南米カリブ
9. ヨーロッパのCIS加盟国
10. 中央アジアのCIS加盟国

(本書をもとに筆者作成)


表3 8つのゴールでの評価項目

評価項目
1a. 極度の貧困の半減
1b. 飢餓の半減
2a. 普遍的初等教育
3a. 初等教育の男女平等
3b. 中等教育の男女平等
3c. 識字率の若年男女の平等
3d. 国会での女性議員
4a. 5歳未満児死亡率の2/3減少
4b. はしかの予防接種
5a. 妊産婦死亡率の3/4減少
6a. HIV/エイズの蔓延防止
6b. マラリアの蔓延防止
6c. 結核の蔓延防止
7a. 森林の損失の防止
7b. 都市部において安全な水を利用できない人の半減
7c. 農村部において安全な水を利用できない人の半減
7d. 都市部において衛生を確保できない人の半減
7e. 農村部において衛生を確保できない人の半減
7f. スラム居住者の生活改善
8a. 若者の雇用

(本書をもとに筆者作成)