B4の大屋です。
今更ですが、昨年11月13日、助教のAnna先生とフィリピンの首都マニラにあるアジア開発銀行(ADB:Asian Development Bank)本部に行き、ADBの二人の専門家の方に、MDGsおよびポストMDGsについてインタビューを行って参りましたので、簡単に報告致します。
ADBは1966年に設立され、アジア太平洋地域の67の国・地域で構成されている(2013年12月4日現在)国際開発金融機関です。特にアジアは世界の貧困人口の三分の二を抱える地域であり、その活動内容は、開発途上国に対する資金の貸付や投資、開発プロジェクト等に対する技術支援や助言業務といったものがメインになっています。
まずは午前中、一人目の専門家の方に、MDGsに対する各国の意識や、MDGsとポストMDGsの成立時の状況の差、また、訪問直前に巨大台風Haiyanがフィリピンを直撃していたということもありADBの災害対応について伺いました。
MDGの進捗はしばしばその国の経済成長と関係性があるとされますが、各国が例え急速な経済成長を見せていたとしても全人口での底上げが出来ていなければ満足することが出来ない、という傾向を感じるそうです。そういった意味では包括性や公平性といった要素がポストMDGのアジェンダの中で重要になってくると予想されていました。
また、MDGはそのトップダウンのアプローチを批判されることがありますが、そもそもMDGが策定される段階において割と性急にプロセスが進められた感があり、それが結果として現在の結果及び批判につながってしまっているとのことでした。この反省に立ち、現在のポスト2015策定へ向けた動きは1991―2001年頃のMDG策定時と比べ、より多くの市民社会・組織、メディア、学術・研究機関、といった組織が議論の場に比較的多く参加を果たせているそうです。
最後に台風のことについて伺いました。今回の台風被害の後、多くの緊急時の特別組織が行動を起こしていますが、ADBの主なチャレンジはロジックに重きが置かれており、日頃から災害管理や関連政策、ツールといったものに対して研究・提言をしていて、そのような組織とは貢献の仕方が異なるそうです。ただ、自発的に行動する職員はいるそうで、実際にインタビューした方の同僚が訪問前夜に援助活動をしていたというお話を聞きました。
午後には別の専門家の方に、MDGの失敗だけでなく成功の部分や、ポストMDG策定へ向けたアプローチ案について伺いました。
MDGは現在、2015年に期限を迎えるというタイミングもあって、割とその欠点や過誤についてスポットライトが当てられることが多いですが、一方で多くのポジティブな効果を国際社会にもたらした面もあります。特に開発コミュニティをとりまとめ、諸問題に対する各国政府の意識を創出し、貧困削減へ向けたモチベーターとしての機能を果たしてきたことは評価されるべきであり、また歴史的に見ても、このような単一のシンプルな枠組みで世界が一つの方向を向いて来たことは意義のあることだとも述べておられました。
また、MDGスタート時から少し時間がかかりましたが、2008年頃からアジアでもいくつかの国はすでにMDGを自国の開発戦略に取り込む段階を迎えており、それに加えて各国が抱える独自の問題に対してゴールを創造するような動き(タイのMDG+、カザフスタンのMDG++、モンゴルのゴール9等)も見られるようになり、MDGをツールとした貧困削減は現在徐々に進捗を見せています。ただ、これはお二人が共通して述べられていたことですが、MDGの策定段階におけるプロセスが性急だった点が各国のスタートダッシュにつまずいた原因だと指摘し、もっと多くの協議がなされていれば現在の状況がもう少しはやく見られたかも知れないと述べておられました。
大屋森太郎(B4)