欧州の風力発電

欧州風力発電協会(EWEA)(http://www.ewea.org/)によると、欧州風力産業の来る10年の研究・開発戦略は、「陸上風力発電が2020年までに、洋上風力発電が2030年までに競争力の強いエネルギー源になること」である。

2009年にEC (European Commission) が出版した「Investing in the Development of

Low Carbon Technologies (SET-Plan)」によると、「風力発電は、2020年までに欧州の電力の20%、2030年までに33%を上限で発電できる可能性がある」としている。

しかしながら、現在、欧州の発電量の約5%のみ(2008年は約4%(下図参照))をカバーしている風力発電が、上記のことを達成させるには障壁は少なくない。

図 EUの発電量(2008年度)

f:id:TokyoTechAbeLab:20110615110031p:image:w360:left

(出所:IEA統計より作成。)

2010年の欧州における風力発電の新規設置容量を見ると、EWEAによると、新規設置容量は9,883メガワット(MW)となり、2009年(1万674MW)比で約7.4%減少した。

2010年の風力発電の新規設置容量が最も多い国は、2009年に続いてスペインであったが、前年比38.3%減の1,516MWという大幅な落ち込みで、スペイン風力発電協会によると過去7年で最も低い水準であった。その原因として2009年中盤から開始された事前割当制度(Pre-Allocation Register)や、2013年以降の新しい規制の枠組みがまだ不確実なこと、財政危機の影響が挙げられている。

また最大の風力発電導入国ドイツの設置容量も減少した。2010年は第2位の1,493MWであったが、前年比22.1%減となった。その原因として、スペインと同様に財政危機の影響、電力網への接続に関する不確実性、間隔の要件や高さ制限等による陸上風力の新規建設用地不足が挙げられている。

EWEAによると、今回発表された新規設置容量の数字は、事業者が再生可能エネルギー関連事業の資金を十分に調達できていないことを示しており、資金調達の拡充が急務だと、ファイナンスの課題を指摘している。

その一方、ポーランド、ブルガリア、ルーマニアなど中・東欧の国では設置容量が拡大した。陸上と洋上を比較すると、陸上風力発電が伸び悩む一方で、洋上風力発電は2010年に前年比51%増の883MWが新規設置され、順調な伸びを示している。

現在、洋上風力発電はイギリスが最大の導入国となっており、2011年以降も大規模な洋上風力発電所の建設・運転開始が予定されている。

また、2011年4月1日には、英国とオランダの電力網を結ぶ海底送電線プロジェクト「ブリットネッド(BritNed)」が完成し、5月12日から本格的な送電が開始された。ブリットネッドの完成により、今後の普及が見込まれる洋上風力などで発電された電力を、国境を越えて送電することが可能となる。

英国のヒューン・エネルギー気候変動相は「ブリットネッドの完成により、再生可能エネルギーにより発電される電気をほかの国と共有することができる。20年までに多くの海底送電線の建設が計画されており、今回の10倍の規模の10GWを送電できる海底送電線網が北海で完成するだろう」との見通しを立てている。

EWEAは2011年の洋上風力発電の新規設置容量について、2010年を上回る1,000~1,500MWを予想している。

ECの「風力発電は、2020年までに欧州の電力の20%、2030年までに33%を上限で発電できる可能性がある」とする見通しの中で、洋上風力発電が今後果たす役割はますます大きくなりそうである。

中村寛樹

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

This site uses Akismet to reduce spam. Learn how your comment data is processed.