バイオマス日本の政策評価

平成23年2月15日にバイオマスニッポンの政策評価がなされていた。

その評価内容は

(1)政策全体のコスト(決算額)、(2)バイオマス関連事業の効果(アウトカム)、(3)バイオマスタウン構想の進捗状況、(4)バイオマスの利活用現場(バイオマス関連の施設)におけるCO2削減効果等、政策の有効性や効率性を検証するためのデータがこれまで十分に把握されていなかったことが明らかになった。

と散々である。つまり、業者がバイオマス事業をやりっぱなしで、その結果を行政が把握していないという状況である。(より詳しい課題は文末参考。)

評価内容では設備稼働率が低いとう指摘もありる。つまり、バイオマス関連施設を建てるだけ建て、その管理・運用までを視野にいれた事業がほとんどなかったことである。これは私の推測であるが、事業を立ち上げして、バイオマス関連施設の初期投資さえすれば、事業そのものはなんとか軌道にのるという”甘い”見通しだったのではないか?もちろん、場合によっては導入コストの逓減は重要な方法ではあると思うが。

また、日経新聞では

市場経済に乗り始めた建設廃材などを尻目に、取り残されているのが国内の林地残材だ。間伐後、山間に薄く広く散らばるため、運び出すだけでコスト高になる。林地に置いた間伐材を山から降ろして運ぶコストに比べ、エネルギー利用者が木質チップを使う場合に経済メリットがある価格の方が低いというギャップが、活用への壁になっている。

と間伐材のバイオマス利用の困難性を指摘している。現状では間伐の多くは切り捨て間伐が行われているとうことであろう。林地残材のバイオマス利用だけでは間伐材をチップにして売る収益と間伐をするコストがまったく見合わない現状があるのだろう。林業政策、もっといえば木材の構造材としての利用とバイオマスとしての利用を一緒に考えなければ、この状況の打破は難しいと思う。

しかし、実際は(これも私の個人的な見解であるが)、森林は林野庁、バイオマス発電は経産省、木材の住宅利用は国土交通省など管轄がわかれているため、連携をとるのが難しいのだと思う。

もうひとつあらためて気付いたのは、資源エネルギー庁が出している、「エネルギー長期需給見通し」の中で新エネルギーのうち、2020年まではバイオマスによるエネルギー利用がもっともおおい。バイオマスといっても廃材や先ほどのべた林地残材など幅が広いが、現在ではもっとも利用可能性が高いものであると考えられる。また、もし、国産材の利用拡大がすすめば、自然と廃材も国産材を利用したものが増えるので、バイオマスのうちの国産のエネルギーの割合が増えるのではないかと思う。

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まとめとして、自然エネルギーを積極的にしようするという世の中の流れを維持するのであれば、

バイオマスだけなく、太陽光、風力、地熱、などすべての自然エネルギーについて単なる試験的なパイロット事業ではなくて、自然エネルギーを本格的に使用できるような運用までを考えたプロジェクトを計画していいく時期にさしかかっているのではないかと思う。

バイオマスニッポンの課題

本政策評価でこれらの事項を把握・分析した結果、以下のような課題あり

  1. バイオマス関連事業について、バイオマス関連の決算額が特定できたものは214事業中122事業(57.0%)の1,374億円(平成15年度~20年度)。残り92事業の決算額は関係省において特定できていない。また、効果が発現しているものは214事業中35事業(16.4%)。これらについても、国の補助により整備された施設の稼働が低調なものが多いなど、期待される効果が発現しているものは皆無。さらに、バイオ燃料の製造施設に対する補助事業を3省でそれぞれ実施するなど、複数の省や部局が類似の事業を実施しており非効率な例あり
  2. バイオマスタウン構想に掲げる取組(785項目)のうち、構想どおりに実施されているものは277項目(35.3%)にとどまる。また、目標の達成度を測るバイオマス利用率の変化について、全てのバイオマス原料を把握しているのは90市町村中15市町村(16.7%)にすぎない。
  3. バイオマス関連施設について、CO2収支を把握しているものは132施設中3施設(2.3%)。また、CO2収支等4項目のCO2削減効果について、学識経験者の知見を得て当省が試算した結果、全ての試算項目において効果が発現しているものは77施設中わずか8施設(10.4%)

参考資料

総務省 バイオマスの利活用に関する政策評価<評価結果及び勧告>

http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/39714.html

日経新聞 バイオマス発電、廃材活用 林地残材、コスト課題  日経エコロジー編集部 (閲覧には会員登録が必要)

http://www.nikkei.com/tech/ecology/article/g=96958A9C93819696E3E7E290958DE3E5E2E1E0E2E3E38AE0E3E2E2E2;df=2;p=9694E2E4E2E7E0E2E3E2E3E7E5E5

資源エネルギー庁 長期エネルギー需給見通しのポイント

http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/siryo2009/siryo04/siryo1-3.pdf

Written by 栗山昭久

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