M2 佐藤です。
非常に優秀なエネルギー資源が発見されたとのニュースです。
石油生成藻類という有機物を取り込んで炭化水素を作り出す藻の新種が発見されました。
生産能力10倍 「石油」つくる藻類、日本で有望株発見 朝日.com
http://www.asahi.com/science/update/1214/TKY201012140212.html
以下、記事より引用
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筑波大の渡邉信教授、彼谷邦光特任教授らの研究チーム。海水や泥の中などにすむ「オーランチオキトリウム」という単細胞の藻類に注目し、東京湾やベトナムの海などで計150株を採った。これらの性質を調べたところ、沖縄の海で採れた株が極めて高い油の生産能力を持つことが分かった。
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解説①
石油生成藻類を新たに生成することは、温室効果ガス削減に貢献するのか?
石油生成藻類が生成した石油を燃やしたことによって発生する二酸化炭素は、温室効果ガスを増加させません。
もともと地表面にあった炭素を使って生成された石油は、地表面に新たに二酸化炭素を増やすものではなく循環しているだけとみなされるからです。一昨年、昨年に話題になった「バイオエタノール」は、同じ理由により温室効果ガスが排出されない燃料と認められています。
したがって、このオーランチオキトリウムは、現在採掘されている地中に埋まった石油の代わりになることで温室効果ガスの削減に貢献します。
解説②
オーランチオキトリウムが優れている点は?
このニュースが衝撃的な点は、その生産コストにあります。
以下、記事より引用
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炭化水素をつくる藻類は複数の種類が知られているが生産効率の低さが課題だった。
渡邉教授は「大規模なプラントで大量培養すれば、自動車の燃料用に1リットル50円以下で供給できるようになるだろう」と話している。
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エネルギーが普及するかしないかを分ける点は、その生産コストにかかわってきます。
「生産コスト」=「エネルギーを取り出す費用」÷「エネルギー1単位」
という概念で計算できます。
エネルギーによって、1単位は変わってきます。電力では、kWhが主に使われます。石油の世界では、1リットルを使って、リッターいくらという表現が使われています。
また、「エネルギー1単位」=「エネルギー密度」×「エネルギー源の量」
という概念で計算できます。
石油はエネルギー密度が非常に高く燃やすことで、かなりの温度を得ることができます。
一方で、たとえば、風力発電はエネルギー源である風の運動エネルギーは、石油と比べると希薄です。
今回の石油精製藻類は、もともと高かった「エネルギー密度」に加えて、「エネルギー源の量」が10倍程度増えました。すなわち、「生産コスト」は単純計算で1/10、より効率的に生産できることからさらに下がると予想されています。
実際に、発電方式でみれば、自然エネルギーの中では生産コストの低い風力発電、太陽光発電は世界で拡大傾向にあります。仮に記事通りの生産コストで、市場に流通できるのであれば非常に強い競争力を得ているエネルギー源だといえます。
コメント
以上のように、非常に期待が持てるニュースが出てきました。
実用化が進むことを祈るとともに、新エネルギーの早急な展開と市場の過度な負担による失敗を起こしてほしくないという慎重な姿勢にもなってしまいます。
たとえば、得られる石油は安定か?季節変動などはないか?天敵となる病気はないか?従来の石油と全く同じように使えるのか?などなど、石油と比較したときに本当に代替できるか検証したい項目はたくさんありますが、大きな希望を持てる代替エネルギー源として期待していきたいと思います。
むしろ、これらの検証点はすぐに検証し終わって早急に実用化されるのかもしれません。
どんなシナリオに沿って発展するのか楽しみです。
佐藤好浩