経済教室「太陽光発電,全量購入を」(2010年8月20日日経新聞)

8月20日の経済教室に,太陽光発電(PV)の固定価格買取制度に関する記事が掲載されていたので紹介します.筆者は東大の松村先生です.

<要約>

経済産業省は7月,小規模水力や地熱等を加えた再生可能エネルギー電力の新しい全量買い取り制度の案を示した.しかし,家庭用PVに関しては「余剰買取」が残され,全量買い取りへの変更は見送る方針である.

筆者は全量買い取りのほうが余剰買取よりも優れた制度だと考えており,その根拠として以下のような理由をあげている.

(1)余剰電力買取制度の優れた点として「節電」へのインセンティブが高いことがある.しかし,余剰買取のインセンティブの与え方は,特定の時間帯(電気消費量が少なく,PVが稼働する昼間)に偏っており,非効率的である.

(2)全量買い取りへの反対の論拠として,「電気利用者の負担増」や「PVを設置できない家庭の不公平性の増大」があるが,これは全量or余剰の議論ではなく,買取価格をどう設定するかの問題であり,全量買い取りに反対する論拠とはならない.

(3)全量買い取りは「再生可能エネルギーによる発電量」を評価する思想であるのに対して,余剰買取は「売却した電力量」を評価する思想である.例えばスマートコミュニティ等でこのような制度を採用することは,構想をゆがめかねない.

<コメント>

(3)の,「全量買い取りは,再生可能エネルギーによる発電量を評価する思想である」という表現は,全量買い取りの優位性を適切に示しており,納得させられました.

(1)において,余剰買取の優れた点として「節電」へのインセンティブが高いことを挙げる人がいると書かれていますが,これは,政策の本来の目的を見失った結果の議論であると感じました.固定価格買取制度は再生可能エネルギーを普及させるための政策であるにもかかわらず,軸のずれた「節電」を議論しており,そこに注力しすぎてしまうと政策本来の目的を阻害してしまうのではないでしょうか.

向井

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