「研究進む『サービスの科学』」(2010年11月18日,日本経済新聞「経済教室」)

D1向井です.

「サービスサイエンス」という比較的新しい研究分野を分かりやすくまとめている記事を見つけました.

著者は一橋大学准教授の藤川先生です.

記事では,「サービスサイエンス」の最も基本的な特徴であるService Dominant Logic(サービス中心ロジック,SDL)という概念について丁寧に解説がなされています.この概念を解説するために,Goods Dominant Logic(モノ中心ロジック,その中心はおそらくミクロ経済学理論)との対比がなされており,電動ドリルや中古書籍販売業界等の実例も豊富です.

「サービスサイエンス」のService Dominant Logicという概念は,私にとってはもちろん,うちの研究室メンバーの何人かにとっても,なかなか重要な概念のように感じました.

例えば,私は,住宅用太陽光発電(PV)システムの消費者選好について研究していますが・・・

最近私は,PVシステム販売業者に関する,モノ以外の属性(たとえば,地域密着度やアフターケアのこまやかさといった,モノではないが消費者にとって重要な価値)を,概念としてどのようにとらえ,どのようなロジックに基づいた分析手法で分析を行えばいいのか,という問題に頭を抱えていました.

特に,私が使おうと思っている(ミクロ)計量経済分析は,モノ中心ロジックGoods Dominant Logicを土台としています.これでPVシステム販売業者の属性を扱おうとすると,どうしても研究の一連の流れに違和感を感じざるを得ませんでした.

Service Dominant Logicという概念は,この問題をうまく解消してくれます.つまり,経済活動の中心を「モノ」と「モノ以外の何か(つまりサービス)」としてとらえるのではなく,「モノを伴うサービス」と「モノを伴わないサービス」としてとらえる,という,モノとサービスの包含関係の転換を行うことによって,より現代社会をうまく表現できるようになります.

最近,Merketing Research関連の学術雑誌で,自分の研究に関連した論文を良く見つけていたのですが,その背景にはこういうことがあったのだな,と一人感心しました.

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