大気環境と都市幾何構造の関係
−1/50スケールモデルを用いた実験−  PART II

平成19年8月3日 更新 (作成:森泉)


実験内容のおさらい 

本研究では建物配列の幾何構造を変化させたときに、気流や熱環境がどのように変化するかを調べることを目的として、
まず下のような2つの幾何配列群を作成し、同じ気象条件下での計測を去年の10月より行っています。


       
                                          @ 配列R        A 配列U


1.観測サイトの概要

1辺12mの正方形コンクリート基盤を2基用意し、それぞれ異なる形状の建物を配置しました。

@ 配列R (写真奥、図の左側のような配置)
1辺15cm角の立方体コンクリートブロックを建蔽率25%で整列に敷き詰めてあります。

A 配列U (写真手前、図の右側のような配置)
ブロックの底面は配列Rと同じですが、高さが7.5cmと22.5cmの2種類となっており、これらを互い違いに敷き詰めてあります。
建蔽率と平均建物高さは比較しやすいように配列Rと同じにしてあります。


これら2つのサイトの(季節風の)下流にあたるほうに、気温測定用の熱電対を鉛直方向に数個と、超音波風速温度計1台を
それぞれ設置して観測を行ったので、今回その結果を少しだけ紹介します。




2.鉛直気温分布

下のグラフは、熱電対で取った気温を時間ごとに分けてアンサンブル平均した気温分布です。
ここで、縦軸は測定高度z をこの配列の平均建物高さH (15cm) で割った値で示してあります。
3つの時間帯はそれぞれ、"daytime":11:00〜14:00、"evening":16:30〜19:00、"night":23:00〜4:00です。


上の図を見ていただきますと、いくつかの違いに気づくかと思います。
中でも、日中(daytime)の分布ではz/Hが1以下の高さで大きく異なります。
日射や風の強制力、コンクリートの材質ともに同じであることから考えると、この差は建物配置の違いが生んだものだと考えられます。
次のグラフで紹介しますが、建物高さにバラつきを持たせることによって
模型都市内の乱流混合が一段と強くなり鉛直方向の気温差が平均化されること、
それに加え、日射が床付近に比べて建物の上部に多く当たって温度が高くなりやすいことが分布に現れているのでしょう。




3.フラックス

続いて両サイトにて観測されたフラックス同士の相互比較をしてみます。

下のグラフは運動量フラックスのプロットです。
凹凸のある配置のほうが運動量輸送が活発であることが明らかですね。



一方、下のグラフは顕熱フラックス(熱の輸送量)です。
こちらはサイト間に大きな違いがありません。
運動量が配列Uの場合に効率的に輸送されるものの、
日中の鉛直気温分布から分かったように地表と上空との温度差が小さいため、
それらの効果が打ち消しあってほぼ等しい輸送量になったものと考えられます。



このほかにも、この研究では乱流特性(各種乱流統計量・スペクトル)や地表面パラメータ(抵抗係数CD、粗度zm・zTなど)の検討を行っています。

今年秋に行われる気象学会(10/14-16、北海道大学)にはそれらを含めたもう少し詳しい成果を発表したいと思っていますので、
ぜひ聞きに来てください。


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