Takagi Labo, Tokyo Tech

Research

潮位差発電に関する研究論文

防潮水門を活用した新たな潮位差発電に関する研究論文を2編,土木学会より発表しました。防災対策と海洋エネルギー発電の相乗効果を期待して2020年より始めた研究です。

可動式港口締切り技術を利用した小潮位差発電の可能性について,土木学会論文集B3(海洋開発), Vol.77, No.2, 925-930, 2021.

運河の水門閉鎖で生じる潮位差を活用した発電に関する試案,土木学会論文集B3(海洋開発), Vol. 77, No.1, 1-5, 2021.

 

英語論文紹介

研究成果の大部分を海外の学術論文に投稿しています。日本の論文をないがしろにしている訳ではありませんが、英語で書いたものを日本語に、あるいは日本語のものを英語にして投稿するのは、二重投稿に該当し、認められないことが多くなってきました。またアジアの途上国を研究の主フィールドにしていることもあり、日本語では読者が限られてしまうため、結果的に英語論文が増えてきています。そこで、ここでは最近発表した主要な論文を研究の経緯を交えて、平易に紹介したいと思います。

 

#17 Oscillatory Characteristics of Young Mangroves exposed to Short-period Waves, Science of The Total Environment, 2021, DOI:10.1016/j.scitotenv.2021.148157

#16 Community-Based Portable Reefs to Promote Mangrove Vegetation Growth: Bridging between Ecological and Engineering Principles, International Journal of Environmental Research and Public Health, 2021, DOI:10.3390/ijerph18020590

#15 “Adapted Mangrove on Hybrid Platform” – Coupling of Ecological and Engineering Principles against Coastal Hazards, Results in Engineering, 2019, DOI:10.1016/j.rineng.2019.100067

上記3つの論文では,マングローブなど海岸植物が都市で育ち,いずれ林や森となり,津波や高潮,高波から地域を守ってくれるためには,どのような条件が必要か考えています。このために,都市適応型防潮林のコンセプトを考えて(論文#15),波に対する耐性を調べる現地試験や室内試験,マングローブの成長試験などを行っています(論文#16, 17)。世界にはマングローブ林を切り開いてできたような都市が数多くありますが,もはや元には戻れないという場所がほとんどです。失われた自然を取り戻すという視点もありえますが,私たちのコンセプトは,あくまで今の都市の状況を出発点として,マングローブなど植物を脆弱な都市の補強のために何とかして使えないかという発想です。この場合,植林直後のマングローブがいきなり役に立つことはありませんので,しばらくは今の海岸堤防なり防潮堤を維持する必要があります。また,開発し尽くされた都市の海岸では植物が育つような場所がそもそもありません。そのため植物が育つためには,人工的な基盤(プラットフォーム)を作ってあげる必要があります。要するに埋め立て的なものが必要になります。それでは通常の土木工事と変わらない,植物を出しに使った公共事業ではないか!と言われそうですが,そうではありません。公共事業であれば,造成する土地の沈下対策や耐震化のために地盤改良を行いますが,提案するプラットフォームはそういう大がかりで高価な対策を必要としません。植物が成長できる範囲であれば,多少沈んでも,液状化しても構わないのです。使う土砂だって良質な山土でなくても,産廃扱いになってしまうような浚渫土でも構いません。もちろん法律で使えないところもあると思いますが,マングローブの場合,多少汚れた土の方がよく育つかも知れません。このように都市という環境で防潮林が繁茂するために,最低限必要な手当をしてあげるというのが発想の中心です。ちゃんと育ってくれれば防潮林の機能をしっかりと果たして,既設の老朽化した堤防が不要になるかも知れません。したがって,研究上大切になるのは,植物の成長過程や周辺環境の将来変化予測,それに応じた対策の最適化ということになります。論文#16では,生えたてのマングローブの波に対する強さを調べるために,奄美大島のマングローブ林にて調査を行い,これらの結果をもとに,植林したマングローブを守るための特別な消波工をデザインしました。重機に頼らず人の手でも作れそうなサイズ感になりそうで,”ポータブルリーフ”と名付けました。また,論文#17では植林直後のマングローブが波によってどのように揺らされるか詳しく調べています。周期が1秒以下のさざ波は,工学では通常無視される存在ですが,実はこの小さな波がマングローブの初期成長に非常に大きな意味を持つのでは,という点を示す面白い結果が得られました。

 

#14 Statistics on typhoon landfalls in Vietnam: Can recent increases in economic damage be attributed to storm trends?, Urban Climate, 2019, 30, DOI:10.1016/j.uclim.2019.100506

研究室では台風の統計的な変動性についても研究しています。この問題に最初に関心を持ったのは,2008年5月にミャンマーに上陸したサイクロン(台風)・ナルギス(Nargis)を調査したときでした。この台風は大きな高潮を引き起こし,その犠牲者は14万人ともいわれています。隣のバングラデシュは世界一台風リスクが高い国と言っても過言ではないですが,ミャンマーはナルギス以前はリスクが高い国とは認識されていませんでした。それまでも台風自体は上陸していますが,調べてみるとナルギスの経路は非常に珍しいルートであったことがわかりました(詳しくはこちら)。それ以降も,日本やフィリピンに上陸した台風について色々と調べる中で,台風とは確率的な分布に素直にフィットしない,かなりやっかいな気まぐれさ(volatility)がその本質ではないかと考えるようになりました。最近では,強い台風が頻発すると何が何でも気候変動の問題に結び付けようとする報道が多く困ったものですが,台風の激しいランダム性が気候変動レベルの変動性で十分に説明できるとは思えません。それよりも,過去数十年間強い台風が発生していない地域で,その間の人口増加や経済発展,開発により,現在どれほどリスクが潜在的に高まっているか,そのような視点の方が防災上は重要と考えています。このようなことを定量化した研究がこの論文の内容になります。対象にしたのはベトナムですが,この国は台風常習国であるとともに南北に長い海岸線を持ち,主要な都市がだいたい沿岸部に位置しているので,台風上陸と被害の関連性を見出しやすいのではないかと考えたためです。被害も人的被害についてはベトナムの台風防災力が向上しているおかげかここ数十年で犠牲者は減っていますが,経済的被害は年々増加しています。この要因を統計的な手法で分析しました。その結果,少なくとも過去40年間は台風の上陸頻度や強さなど気象的要素に有意なトレンドはなく,経済被害は台風の総合的な強さと経済成長に強く相関していることがわかりました。また,2008~2017年の10年間では,全国的には台風の頻度は増えていませんが,北緯20~22度のベトナム北部地域で上陸回数が有意に多く,ここに含まれるハノイやハイフォンなど大都市での経済被害が国全体の被害額を引き上げたものと考えられます。つまり,ここ最近経済被害が統計上大きくなっているのは,経済が集中している場所に,たまたま強い台風が立て続けに上陸したことが主要因と考えられます。当たり前と言えば当たり前のことですが,経済が膨らめば災害リスクも膨らむことを数字で示せたことになります。

 

#13 Analysis of generation and arrival time of landslide tsunami to Palu City due to the 2018 Sulawesi earthquake, Landslides, 2019, 16, DOI:10.1007/s10346-019-01166-y

2018年9月28日Mw7.5の激烈な地震がインドネシア・スラウェシ島を襲いました。この地震は津波や地滑りを引き起こし,4000名以上の犠牲者を出すとともに,住宅やインフラに甚大な被害を及ぼしました。地震の発生パターンや震源から想定される津波の規模に対して,実際に生じた津波があまりにも大きかったため,地震や津波の研究者コミュニティではそのメカニズムについて議論が巻き起こりました。島中部に位置するパル湾で特に大きな津波が発生しましたが,住民が撮影した動画より,地滑り起因の津波ではないかという説が当初より有力な説として支持されていました。本論文ではパル湾での調査に基づいて,複数ある地滑り箇所のうち最大規模の地滑りと津波発生・伝播過程を詳細に調べ上げて,このことを決定的に明らかにしました。その方法は,住民証言やドローン撮影による地滑り箇所の特定や,漁船をチャーターしての深浅測量,それらの情報をもとにした地滑り量の推定や津波の再現解析などです。また,地震発生直前にパル空港を飛び立った飛行機のパイロットがコックピットより津波らしきを目撃しており,その方より得た状況証拠や,パル湾を見渡せる丘に住まう方より入手した動画,実際に津波に巻き込まれながら助かった方の生々しい証言など,各地で信ぴょう性の高い証拠を得ることができたことが決め手になりました。地滑りは急こう配な海岸で発生しており,陸上より確認できる範囲だけでも高さ5メートル近くの断層が生じていましたが,さらに海底では40メートルほどの崖のような地すべりが生じていました。地滑りは津波を瞬時に引き起こし,すぐ近くの海岸には1分以内に津波が到達しています。津波から命からがら逃れた生存者は,そのときの様子を爆発が起きたと表現し,津波は一度ならず三度も襲ってきたと証言しました。約5キロ離れたパルの市街地にも5分ほどで津波は到達していますが,浅瀬の存在で津波は分かれて2つの方向から襲っています。論文では,このようにいかに短い時間で津波が到達したかを詳しく説明しています。地震直後,数十分ならまだしも,数分で襲う津波にいったい何ができるのでしょうか。技術だけに頼らない,人間の本能にも訴える何かが必要な気がしてなりません。

 

#12 Public perception of typhoon signals and response in Macau: did disaster response improve between the 2017 Hato and 2018 Mangkhut typhoons?, Georisk, 2019, DOI:10.1080/17499518.2019.1676453

2018年も重大な台風が多い年でした。この年の台風21号(Jebi)は近畿・四国地方に上陸し,大阪や神戸などの海岸や港,空港を中心に大きな被害をもたらしました(詳細はこちらの論文で報告しました)。大都市を直撃した点で類似しているのが,同年9月に香港やマカオを襲った台風Mangkhut(中国語表記:山竹)です。この地域が台風の直撃を受けるのは前年の台風Hatoに続いて2年連続です。この2つの台風は,ほぼ同じような経路を辿り,強さも同程度でした。この論文では,台風Mangkhutの後にマカオで調査した結果に基づいて,被害の状況を報告しましたが,メインの関心は下の記事(#11)のような顛末を引き起こした台風HatoとMangkhutの約一年の間で,台風対策・対応に何か変化があったか調べることでした。Hatoの直後に堤防の大改修計画が大々的に発表されましたが,現地で見聞きした限りほとんど何もと言って良いほど,ハード対策については進展がありませんでした。ところが,ソフト対策については目覚ましいものがありました。例えば,街のいたるところに高潮の予測水位を示す標識が立てられたり,地域の防災訓練が行われたりしていました。多くの住民の方々に,HatoとMangkhutの2つの台風で,行政の対応に変化があったか質問しました。総じてMangkhut時の行政の対応に高評価の意見が多く,9割近くの方が向上したと回答し,さらにそのうちの半数は格段に向上したと答えています。たった一年です,いったい何があったのでしょうか。私たちの解釈は,行政は台風Hatoであれだけ痛い目にあったのだから,Mangkhutではこの上なく迅速に対応したのであろうということです。実際に,5段階の台風シグナルのうち,避難開始に最も重要な意味を持つシグナル8がMangkhutではHatoよりも,7時間も早く発出されていました。また,避難を喚起するため,ある地域では世帯ごとに行政の方が声をかけて回ったようなこともあったようです。住民の方には行政のこのような迅速さが評価されたようで,成功事例と呼べる対応かと思います。一方で,私たちの行った分析では7時間早く発出された根拠について,気象変化的な観点からの理由を見出すことはできませんでした。つまり客観的な指標で判断したというよりも,Hatoの経験があってのオーバーリアクションと言えなくもありません。将来同じような台風が接近した際,マカオがどのような対応に出るか関心を持って見守りたいと思います。

 

#11 Track analysis and storm surge investigation of 2017 Typhoon Hato: were the warning signals issued in Macau and Hong Kong timed appropriately?, Georisk, 2018, 12(4), DOI:10.1080/17499518.2018.1465573

思い返してみると2017年は世界中で台風が猛威を振るった年でした。日本では,超大型の台風21号(Lan)が静岡に上陸し,神奈川や千葉の海岸・港で大きな被害を及ぼしました(詳細はこちらの論文をご覧ください)。ベトナムでは,台風Doksuri,Damreyといった国内観測史上トップ10に入る強烈な台風が立て続けに上陸しました。さらに大西洋に目を向けると,Harvey, Irma, Mariaの3つのハリケーンが発生し,米国やメキシコ湾,カリブ海の国々で多くの犠牲者を生み,過去最大の経済損失を及ぼしました。ちょうどこれらのハリケーンが猛威を振るっていた時期であったためか,意外に注目を集めなかった台風がこの論文で扱った台風Hato (中国語表記:天鴿)です。この台風は,中国のマカオ・香港・珠海など珠江デルタの大都市に大きな影響を与えました。同業の研究者の関心が他の地域に向いていたためか,われわれ東工大のチームがいち早く調査を行い,結果的に一番早く調査結果を発表することになりました。世界初の調査であったかどうかは,自己満足の範疇かも知れませんが,この論文には思わぬ反響がありました。論文では,台風・高潮被害の状況に加えて,マカオ,香港での台風の警報(シグナル)のタイミングについて分析を行っています。この分析が地元の新聞やメディアに取り上げられました(例えば,こちら)。その背景は,台風Hatoがマカオで想定外の被害を及ぼしたため,当時の気象庁長官が免職となり,さらには懲役が言い渡されるという異様な自体が発生したことと関係しています。私たちの論文では,台風Hatoが平均的な台風よりも有意に速い速度で接近し急速に強化したため,シグナルの迅速な引き上げが難しかった可能性を示しましたが,この考察がその後の司法の場において無罪を求める側の科学的な判断材料の一つになった模様です。このように,災害調査の場合,論文が思わぬ形で引用されることがあるため,調査の正確性や公平性を肝に銘じて,今後も調査を行っていく必要性を痛感します。

 

#10 Long-Term Design of Mangrove Landfills as an Effective Tide Attenuator under Relative Sea-Level Rise, Sustainability, 2018, 10(4), 1045; DOI:10.3390/su10041045

マングローブの密林に足を踏み入れると,その根の密集具合に驚かされます。支柱根や膝根,板根,通気根など,種に応じて様々なタイプの根を張りますが,海や河口の複雑な波や流れや,軟弱な泥土上での繁茂に実にうまく適応していると感動します。防災分野でもこのマングローブが有するしなやかさに注目が集まっており,津波や高潮への切り札として年々期待が高まっている様子です。ただ一歩引いて考えてみると,残念ながら人様を生かすために,マングローブが繁茂している訳はなく,自らの種の保存のためにしなやかさを身に着けたのだろうと推察できます。人様が恩恵を受け得るとすれば,マングローブの集団・コロニーが生き残るためのシステムの端っこに,少しだけ間借り(疑似共生)できた場合ではないかと考えます。マングローブとしても高波で個々は流されたとしても,集団全体が根こそぎ洗い流されてしまうような事態は困るわけで,人間はその全体系システムを(ずる)賢く利用する知恵が必要なように思います。前置きが長くなりましたが,この論文ではマングローブに心地よく(?)繁茂してもらうための地盤条件とはどのような条件なのか,また首尾よく繁茂してくれたときの減災効果はいかほどか,地盤沈下や海面上昇のことなども考えながら検討しました。マングローブの植林はよく失敗しているようですが,まあそれはそうだろうと納得するところもあります。人様の都合の良いところに,種をずぶずぶ植えたところで,マングローブとしてはそれに応える義務はないのですから。マングローブの成長にそこそこ理想的な基盤を研究し,準備するくらいは,共生関係を熱望する人間側が考えるべきことではないでしょうか。

 

#9 Sea-Level Rise and Land Subsidence: Impacts on Flood Projections for the Mekong Delta's Largest City, Sustainability, 2016, 8, 959; DOI:10.3390/su8090959

メコンデルタの洪水研究を始めた2011年頃だったと思いますが,河口から80キロほど内陸に位置するベトナム・カントー市のとある気候変動関連機関のディレクターの方から,この場所の河川水位の上昇が海面上昇の2,3倍速いという説明をうけました。この方いわく,川を遡るにつれて海面上昇が増幅するのだ,という説明でした。その理屈がピンとこなかったのですが,当時は検証するデータを十分に持ち合わせていなかったこともあり,しばらく寝かせていました。その後,デルタ流域のいろいろな場所の水位データを入手できたので,内陸部での水位上昇量とベトナム周辺海域の海面上昇量を比較することができるようになり,その結果をまとめて発表したのがこの論文です。検討では,実に海面上昇の約4倍と非常に速い水位上昇が内陸部で進行していることがわかりました。しかし同時に,この変化は水位の絶対的変化ではなく,地盤に対する相対的変化によるもので,海面上昇量の3倍近い早さで地盤沈下が発生していることを導きました。この結果は,水位が上昇していても,自分がずぶずぶ沈んでいても,どちらもグラフ上は同じに見えてしまうという水位観測の盲点を表す結果といえます。そして,ローカルな天動説ともいえましょうか,自分は変わらず周りが変化していると感じるのが人間の習性なのかもしれません。ジャカルタのように年に10センチ以上も沈下している場所であれば,さすがに問題の本質を追及せざるを得ません。しかし,ごく微妙な変化の場合,「また海面上昇が悪さをして!」,と責任転嫁してしまえばそれでおしまいです。メコンに限らず,大なり小なり地盤沈下が進んでいる場所は多いと思いますが,グローバルスケールの大変化が注目を集める一方で,このように自分の足元の変化が見過ごされている,あるいは無視されているケースが世界中には結構あるように思います。

 

#8 Mangrove forest against dyke-break-induced tsunami on rapidly subsiding coasts , Nat. Hazards Earth Syst. Sci., 2016, DOI: 10.5194/nhess-16-1629-2016

この研究は,インドネシア・ジャカルタで,今の日本ではありえない薄っぺらい壁でできた海岸堤防に出くわしたことがきっかけです。単に薄いだけではなく,その堤防に守られている背後の密集集落で猛烈な地盤沈下が進行中です。ジャカルタ全体で地盤沈下は進んでいますが,多分この辺りが一番著しいと思われます。実際に標高を測量してみたところ,海面下3メートルくらいに集落が広がっていました。さらに恐ろしいことに堤防のつなぎ目からは目視でわかるくらい水が漏れており,その薄い堤防には大きな作業船がいくつも係船されていました。もし,このまま地盤沈下が止まらなければ,海水を防ぐためさらに嵩上げがなされ,継ぎ足し継ぎ足しで,そびえ立つ「スーパーカミソリ堤防」になってしまうと危惧されます。万が一,この壁に船が衝突するような事態が発生すれば,耐え切れず,堤防が破堤するかも知れません。この論文では,堤防が破堤するとどのような威力の洪水が発生するかを解析しました。予測結果が示す状況は,穏やかにじわじわ浸水していくような状況ではなく,かなり勢いの強い流れが短時間に細い路地の隅々まで流れこむ深刻な状況でした。ちなみに,このようなタイプの洪水にあてはめる用語が存在しなかったため,dyke-break-induced tsunamiという造語をタイトルに使用しました。文字通り,その威力は津波に匹敵する洪水であり,決して看過しないで欲しいという願いが込められています。この論文では危険を煽るだけではなく,対応策も提示しました。言うは易しですが,ちょっとしたマングローブ林を堤防の前面に築くのです。マングローブは自然のバリケードとして非常に効果的で,このケースでも浸水自体は免れないまでも,流れは人命を守れるくらい大きく和らげられる可能性が示されました。

 

#7 Maximum wind radius estimated by the 50 kt radius: improvement of storm surge forecasting over the western North Pacific, Nat. Hazards Earth Syst. Sci., 2016, DOI: 10.5194/nhess-16-705-2016

本論文が扱う「最大風速半径」は高潮解析における重要なパラメータの一つですが,これまで意外に見過ごされてきました。2013年台風Haiyanの高潮解析を行った際,既存の方法ではうまく台風の気圧分布が再現できなかったことが,この研究をはじめるきっかけとなりました。この論文では,最大風速半径の推定手法をレビューするとともに,新たな手法を提案しました。中心気圧や最大風速を使用する従来の手法は,最大風速半径の平均的な傾向をよく表すのですが,ばらつきが大きく,高潮を過大あるいは過小評価する可能性が高いことがわかりました。日本の南方海域には,沖縄や鹿児島の島々などに10ヶ所もの気象観測所が存在し,陸地の影響をあまり受けていない台風時の気象データを入手できます。本研究では,観測所データと台風ベストトラックデータを分析することで,「暴風域半径」が最大風速半径の推定に非常に有効であることを示しました。しかし,ある程度の推定誤差は避けられないので,これまで確定的に扱われてきた最大風速半径の変動を考慮する必要があることも訴えています。新たな手法は,中心気圧が非常に低い強烈な台風がもたらす高潮の予測に,特に威力を発揮すると考えています。

 

#6 Storm Surge and Evacuation in Urban Areas during the Peak of a Storm, Coastal Eng., 2016, DOI: 10.1016/j.coastaleng.2015.11.002

台風が接近する前に安全な場所に避難できていれば良いのですが、何かしらの理由で避難しなかった・できなかった状況を想定してください。この状況で、自宅の前の道路が高潮につかり、今にも家の中に海水が押し寄せそうな状況に気づいたとき、住人はどのような判断をすれば良いのでしょうか。家にとどまる、すぐにでも逃げ出す、まさに生死を分ける判断を迫られることになります。台風Haiyanでは、iCycloneという命知らずのサイクロンチェーサー達が撮影した大変貴重な映像が残っています(こちらの動画の7時47分ごろをご覧ください)。タクロバンの市街地で、とある家族がまさにこの状況で後者の選択をし、腰の高さほどの流れの中を避難する映像が記録されています。幸いにこの家族は無事向かいのホテルに逃げつくのですが、この判断は正しいと一般化できるのか、これが本論文執筆のきっかけです。私達は、映像分析に加えて、この家族にもインタビューを行い、このときの流速を推定しました。また詳細な数値シミュレーションの助けもかりて、タクロバン市の主要な通りの流速を推定しました。その結果、この家族が難を逃れた通りは、たまたまかなり水流が緩やかな場所で、大半の通りは人が立っていられないほどの流速であったことが明らかになりました。実際に、最近私達が行った調査では、水流の激しいところで、人が流されていく状況が何人かの住人によって目撃されています。この研究はまだまだ続ける必要がありますが、万が一事前に避難できなかった場合、命からがら逃げ出すのではなく、住居内の垂直避難で命が救われるケースがあることを訴えています。

 

#5 Statistics of tropical cyclone landfalls in the Philippines: unusual characteristics of 2013 Typhoon Haiyan, Nat Hazards., 2016, DOI: 10.1007/s11069-015-1965-6

すぐ下の論文の続編です。この論文では特にフィリピンに上陸した台風を詳細に調べ上げ、台風Haiyanの最大風速が200年に一度程度であったことを示しています。下の論文でも取り上げていますが、この台風の上陸時の最大風速は少なくとも過去70年間で最大でしたが、さらに上陸速度も時速41kmと、過去最速であったことを明らかにしています。台風が生み出す風は、中心に回り込む風速と台風自体の進行速度の和で表されますので、2つのベクトルが一致する場所で風速が一層強くなり、結果高潮も大きくなります。さらに台風の接近速度が速いということは、避難にかけられる時間が少なくなることを意味し、防災の観点からとても考えさせられます。また、海面水温と台風の発生についても調べており、2013年Haiyanや1998年Zeb(最大風速が過去2番目)が平年よりも顕著に海水温が高い時期に発生していたことを示しています。地球温暖化と台風の因果関係は必ずしも明らかになっていませんが、少なくとも台風Haiyanは海水温が比較的高い時期に発生したといえそうです。

 

#4 Track Analysis, Simulation and Field Survey of the 2013 Typhoon Haiyan Storm Surge, J. Flood Risk Management, 2015, DOI: 10.1111/jfr3.12136

2013年11月フィリピンを襲った史上最悪の台風Haiyan(フィリピン名Yolanda)の現地調査(詳細はこちらをご覧ください)や高潮数値シミュレーションの結果をまとめた内容です。まず、この台風が一体どれほど強かったのかを調べるために、北西太平洋で 1951 から 2012 に発生した1960個の台風の強度や経路を分析しています。Haiyanと同じ程度の風速は過去28個の台風で発生していました。つまり、Haiyanは最強クラスの台風に間違いありませんが、史上最強と言い切ることはできません。では、何故フィリピン史上最悪の大災害が発生したのでしょうか。先ほどの28個の台風の話ですが、実は大体は太平洋上のどこかで消滅しているか、上陸前に勢いが減衰しているパターンでした。これに対して、Haiyanの場合、上陸時も台風の強さがほぼ衰えることなく、165ノット(秒速85m)という、とてつもない勢いで海岸部の都市を襲っています。この災害では高潮が被害を激甚なものにした訳ですが、高潮による水位上昇量は大体風速の二乗に比例します。そもそも台風というのは最大風速が17.2m/s を越える熱帯低気圧のことを言うのですが、そう考えるとHaiyanはこの5倍の風速となり、それによりもたらされる高潮は25倍ということになります。台風が来れば、大なり小なり高潮が発生していますが、通常は数十cm程度のもので目立った被害もなく、ほとんど話題にも上がりません。ところが、Haiyanによる高潮は、普通レベルの台風の十倍、二十倍のオーダーの高潮を引き起こし、私たちの調査では実に7mにも及ぶ高潮が発生していたことがわかりました。この論文では、引き波から始まり、しばらく後に津波のように押し寄せた高潮現象についても取り上げています。これは恐らく本論文が世界で初めて取り上げた現象ではないかと思います。津波の場合、引き波から始まるケースも一般的に認識されているのですが、高潮の場合、じわじわと水位が上がっていくというのが、これまでの専門家の認識でした(教科書の記述も)。この常識を覆す現象がこの台風の最中に起きていたのです。

 

#3 Method for Quick Assessment of Caisson Breakwater Failure due to Tsunamis: Retrospective Analysis of Data from the 2011 Great East Japan Earthquake and Tsunami, Coast. Eng. J., 2015, DOI: 10.1142/S0578563415500126

東日本大震災のとき、数多くの港が津波により被害を受けました。また、被害をあまり受けず、その後の救援や復旧に大きく貢献した港もありました。この研究では、どのような防波堤が被害を受けたのか、また受けなかったのかを、ざっくりと(マクロに)分析しています。ミクロに分析しなかったのは、被害を受けた防波堤が非常に多く、また同時に被害がそれほどでない防波堤も多かったためです。このようなケースではまず全体を俯瞰して分析することが必要と思います。また、現状では津波に対して防波堤がどのような被害を受けるのか予測する方法が確立されていません。これは津波そのものの予測が難しいこともありますが、津波が作用したときに防波堤が破壊していく過程が非常に複雑だからです。防波堤のうわもの(ケーソンと呼ぶ)はカチカチの重量級コンクリート(内部は砂)ですが、それを支えている土台は捨石とよばれる大きな石、そしてその下を砂や粘土のような地盤が支えます。地盤はセメント系の材料で地盤改良されている場合も多いですが、基本的に防波堤は下に行くほど柔らかい材質になっていきますので、津波が作用したときに最もやわな部分がどのように破壊していくかが予測できないといけません。この予測は容易ではありません。加えて、研究成果を将来起こりうる津波対策に役立ててもらうことが大切ですが、日本には大小あわせて何と4千もの港があり、全て精緻な方法で検証することは不可能に近いといえます。本論文の主要な結論として、防波堤の被害は、津波の高さに加えて、防波堤の断面幅や波消しのブロック(消波ブロック)の有無に影響することを示しました。これらは直観的にも明らかなのですが、被害の限界値のようなものをある程度数字(定量的に)で示すことができましたので、複雑な方法によらず比較的簡単に第一段階のアセスメントを行うことができると思います。

 

#2 Assessment of The Effectiveness of General Breakwaters in Reducing Tsunami Inundation in Ishinomaki, Coast. Eng. J., 2014, DOI: 10.1142/S0578563414500181

震災直後、石巻の日和山に登り、被害の全容を目の当たりにしました。そのとき、眼下の西側と東側で被害の程度に明らかに差異があると感じました。西側の地区は一部を除いてほぼ全ての家屋が流されていました。一方、東側ですが、やはりかなりの被害でしたが、残っている建物も数多く、明らかに西と東で大きな違いが見られました。西側の海側には侵食防止のためのブロック(離岸堤と呼ぶ)以外設置されておらず、これに対して東側には大きな港があり、これを囲む防波堤も残っており、これが東側の被害を軽減したのでは!と、直観しました。この直観を検証したのが、本研究です。結果的には、この直観は必ずしも正しくなかったことがわかりました。この防波堤はいわゆる津波防波堤(釜石が有名)ではなく、通常の防波堤で、設計時の外力として津波を考慮したものではないはずです。ですから、高波に対しては効果的なのですが、津波に対してはもともと保証されていません。本研究で行った数値計算では、残念ながらこの防波堤の効果は認められませんでした。港には船の行き来のため開口部が設けられていますが、この港の開口部は比較的広く、津波の流れを十分にせき止めるだけの機能を果たしませんでした。釜石の津波防波堤のような構造物が機能するためには、その入口が十分に狭い必要があります。防波堤の前後で水位差がつくので、口が開いていればどんどん水が流れこんできます。水道の蛇口と同じです。開口部を狭くすることで、流入量を減らし、到達する時間を遅らせるのが津波防波堤の役割です。一方で、普通の港は一般的には設計上津波を考えてきませんでしたので、高波が防げるならば、それ以上開口部を狭める必要はありませんし、船の航行のためには出来る限り広い方が望ましいのです。ですので、普通の防波堤では津波に対して背後の地域を護れないと、まずは考えて背後地の防災計画を考える必要がありそうです。一方で防波堤の開口部を完全に閉じた仮想のケースで背後地の浸水の状況を解析したところ、非常に効果があることがわかりました。よって、地震発生直後に何かしらの手段で開口部を閉じることができれば、広い港の背後をかなり護ることができると思われます。最近では浮上式の防波堤なども開発されていますので、そのような技術に期待したいと思います。

 

#1 Ocean Tides and the Influence of Sea-Level Rise on Floods in Urban Areas of the Mekong Delta, J. Flood Risk Management, 2014, DOI: 10.1111/jfr3.12094

メコン河(またはメコン川)は、中国、ミャンマー、ラオス、タイ、カンボジア、ベトナムを流れ、約4,800kmの長旅の末、太平洋へと注ぐ、世界有数の国際河川です。この河川の水位変化ですが、例えばラオスあたりでは季節により水位が大きく異なりますが、これは雨季と乾季の降雨量の差で概ね説明できます。ところが、ベトナムに入ると広大で低平なメコンデルタが広がり、海洋の影響、すなわち潮汐が水位に影響を及ぼすようになってくるので、降雨量のみで水位が説明できなくなってきます。メコンデルタにおける潮汐の影響は、これまでも認識されていましたが、上流からの河川流量と潮汐の影響が各々どの程度なのか、また潮汐成分の中でも特にどの成分が支配的なのか、本論文ではこのようなことを定量的に調べています。また、雨季の時期には、潮汐が河川流に逆らって伝播することに伴い、tidal dampingという振幅減少が現れることを明らかにしました。ところで、この論文ではカントー市というメコンデルタ最大の都市をターゲットにしていますが、これは地球温暖化に伴う海面上昇や都市化に伴う地盤沈下などのインパクトを最も受けやすいと考えたからです。カントー市では河川水が緩やかに氾濫し、街が浸水することも珍しくありませんが、現在はほぼ雨季の一時期に集中しています。ところが水位が60cmも上がる(あるいは地盤が60cm下がる)と、カントー市の中心部では実に年間4分の1程度の時間帯で浸水が発生するという解析結果になりました。つまり、雨季・乾季に関わらず、ほぼ毎日のように浸水が発生するのです。これを私たちの例で例えるならば、東京で毎日雪が振るような状況でしょうか。東京でも雪は降りますが、たまに降ると交通は大混乱し、大都市の弱さを思い知らされます。これが毎日ということになったら、一体どんな事態に陥るのか、インパクトは計り知れません。メコンの人も同じで、浸水が雨季の風物詩くらいの出来事であれば我慢もできるのでしょうが、毎日ということになれば、生活への影響は今とは比較にならないでしょう。

 

FY 2013 Main Activities

フィリピン台風Yolanda(Haiyan)の調査研究

フィリピンに史上最悪の被害をもたらした台風Yolanda(Haiyan)の高潮被害について,世界の研究者に先駆けて,調査を行いました。調査や解析結果の詳しい報告は,以下よりご覧いただけます。2014年度も引き続き研究室の重要テーマの一つとして力を入れて取り組んでいきます。

http://www.eng.titech.ac.jp/report_5.html (調査報告,所感)

http://www.ide.titech.ac.jp/~takagi/2013Haiyan.html (解析結果)

http://www.ide.titech.ac.jp/~takagi/2013HaiyanPhoto.html (現地状況写真)

ベトナム海岸災害・防災についての書籍執筆・編集

ここ数年ベトナムの研究に力を注いできましたが,これが書籍出版という成果につながることになりました。Dr.Thao(ホーチミン市工科大)とDr.Esteban(東大)とともにEditorを務め,多くの研究者の協力のもと,この度原稿を提出し終えることができました。今後校正作業を終えて,世界最大手のElsevier社から,"Coastal Disasters and Climate Change in Vietnam: Engineering and Planning Perspectives"というタイトルで2014年9月に出版予定です。

http://www.amazon.com/Coastal-Disasters-Climate-Change-Vietnam/dp/0128000074

東北津波災害の研究

今年度より本格的に研究を開始しました。東日本大震災時に最も大きかった石巻を対象に,東北大災害科学研のDr.Bricker達とともに研究を進めています。2度の現地調査と詳細なシミュレーションをもとに,近く研究成果を論文に投稿する予定です。

 


FY 2012 Main Activities

メコンデルタの洪水リスク、気候変動リスクに関する研究

ベトナムのカントー大学やホーチミン市工科大学の研究者と共同して,メコンデルタの潮汐伝播や減衰過程が都市部の洪水に及ぼす影響について研究を開始しました.IPCC第4次報告の海面上昇を想定すると,現在は雨季に集中して発生している洪水が将来的には一年を通じて発生する状況になることを定量的に明らかにしました.また,数値解析による評価を行い,河川形状や河川流が潮汐伝播に及ぼす影響を検証しました.研究成果は,近く国内外の論文を通じて発表の予定です.

Flood Risk and Climate Change in Mekong Delta

The research group investigated the mechanism of tidal propagation and dispersion in the estuary; they present its influence on flooding in urban areas of the Mekong Delta in association with Can Tho University and Ho Chi Minh City University of Technology. Assuming sea-level rise within the range of IPCC AR4’s projection, it is feared that inundation can occur during any season of the year, whereas it is mostly limited to the rainy season under present sea levels. A numerical simulation was performed to assess how a river’s shape and discharge influence tidal damping. There are plans to publicise these findings in both international and domestic journals.

 

東京湾の津波脆弱性に関する研究

これまで東京湾はその閉鎖的な地形特性のため,有意な津波は発生しないと考えられてきました.しかし,東日本大震災では千葉県の漁港で3m近い津波が観測されており,隅田川でも1.5m程度の津波が発生しました.東京湾には大小様々な河川や運河が繋がっており,加えて低平な土地を護るための防潮堤や水門などの防災施設が高度に整備されているため,湾内を伝播する津波は非常に複雑な挙動を示します.本研究室では,数値解析を駆使して,東京湾において顕著化する恐れのある局所的な津波リスクの評価を行いました.

Tsunami Risk Assessment in Tokyo Bay

Tokyo Bay is considered to be safe against tsunamis because of its semi-closed shape, which would effectively reduce the incoming tsunami energy. However, a 3 m tsunami was observed at a fishing port of Chiba prefecture and a 1.5 m tsunami was observed in the Sumida River after the Great East Japan Earthquake on 11 March 2011. Our research group is investigating the characteristics of tsunami propagation across Tokyo Bay with a focus on local tsunami amplification mechanisms caused by artificial structures such as dikes and floodgates.

 

気候変動と港湾

欧州共同研究センター(EC/JRC)からの招待を受けて,気候変動と港湾に関するスコーピングワークショップに参加しました.発表では,気候変動に伴い港湾防護施設の構造安定性が有意に低下することを示し,その評価方法や対策手法,対策コストに関して専門家として話題提供,ディスカッションを行いました.

Climate Change and Sea Port

As an expert of coastal disaster research, Prof. Takagi was invited to the Scoping Workshop on Sea-ports and Climate Change at Brussels organised by the EU Joint Research Center. He addressed the stability of sea-port defence, which is likely to be further exacerbated by climate change.

 


 

FY 2011 Main Activities

東日本大震災 津波被害調査

東日本大震災による津波被害調査を土木学会合同調査グループの一員として青森、岩手、宮城、茨城、千葉、東京の各地域で行いました。また、米国土木学会(ASCE)の緊急調査グループ(第一陣:団長Gary Chock氏)にも加わりました。このときの成果は、"Tohoku Japan Tsunami of March 11, 20011 Performance of Structures"という報告書としてまとまり、近い将来米国のデザインコード改訂に反映される予定です。

Survey of the disaster caused by the tsunami owing to the Great East Japan Earthquake

Prof. Takagi carried out a series of tsunami disaster surveys in Aomori, Iwate, Miyagi, Ibaraki, Chiba, and Tokyo as a member of the JSCE Joint Survey Group. He also worked with the ASCE Tsunami Reconnaissance Team, led by Mr. Gary Chock. The results obtained by them during the survey have been summarized in the report titled “Tohoku Japan Tsunami of March 11, 20011 Performance of Structures”, and will be utilized in revising the ASCE 7 Standard in the near future.

 

ベトナム 災害脆弱性調査

JST受託研究「ベトナム沿岸域の災害脆弱性調査と防災力向上のための基礎的研究」の研究リーダーとして、早稲田大学、京都大学、ホーチミン市工科大学、カントー大学、国連大学の研究者と合同調査を実施しました。また、ファンティエット市では地元行政関係者40名と合同セミナーを開催し、防災啓発活動を行いました。メコンデルタのカントー市の調査には、学部3年生の1名も加わりました。

Vulnerability Assessment of Coastal Disasters in Vietnam

Prof. Takagi, as the leader of the JST (Japan Science and Technology Agency) research project “Assessment of Disaster Vulnerability of Coastal Areas in Vietnam and Basic Study for Disaster Mitigation”, has led joint surveys with researchers from Waseda University, Kyoto University, Ho Chi Minh City University of Technology, and Can Tho University. They organized a seminar, with a total of 40 local authority members in Phan Thiet city to enhance public awareness on coastal disasters. One undergraduate student from the laboratory joined the survey in the Mekong Delta.

 

気候変動と海岸構造物

将来の海面上昇および台風の強大化により防波堤の安定性能が大きく低下することを数値シミュレーションと信頼性理論にもとづき明らかにし、その成果を国際学術誌Coastal Engineering Journalに発表しました。

Climate Change and Coastal Structures

The research group published a paper for the Coastal Engineering Journal, where they revealed that the breakwaters are very likely to lose their stability, owing to the effects of climate change in the future by using a numerical simulation and a stochastic analysis.