東京湾プロジェクト
期間 1998年8月および1999年8月
目的 首都圏の心肺機能「東京湾」の大気環境を計る。
湾から吹き出した海風は内陸へ入り、その一部は上空を通りまた東京湾に戻ってくる。その過程で、海面は熱・水蒸気・汚染物質の吸収・放出を行う。東京湾内の孤島「第2海保」に陣取り、観光名所「海ほたる」に計測器を置き、その実体を追った。
第2海保は、釣り人には知られた全長100m程度の小島であり、運輸省の古小屋を貸していただいて観測の拠点とした。とにかく、ネズミがすごい。我々の大事な食料と飲料水がやられないよう、片時も油断は禁物である。ネズミの恐怖に怯えつつも、I君の彼女がたまに持ってきてくれる差し入れと、海保から見る東京湾の花火は最高であった。
飛び道具1 ゾンデ
飛び道具と言うよりもこれがないと始まらない。何の変哲もない風船だが、これに環境計測器をつけて、3時間に一回、上空へ飛ばす。風船の計測器から送られてくる信号をコンピュータで解析して、上空の大気の様子を計測する。
飛び道具2 ドップラーソーダ
これは音波を上空に発信して上空の風を計測する装置である。一台は海保に、もう一台は海ほたるに設置した。音波のドップラー信号を利用しているので、雑音があると駄目である。東京湾は大型船舶の出入りが激しく霧笛の音で苦労させられた。日中、天気の良い日は東京湾が一つの小さな小さな高気圧に相当し、下降流が観測される。地上付近で首都圏へ吹き出した海風が上空で東京湾に戻ってきているのである。そのため、神奈川・東京が積雲でモクモク覆われていても、第2海保だけは、晴れ晴れしているということがよくあった。
飛び道具3 セスナ
観光用セスナを格安で借用し、東京湾上空の大気計測を行った。東京から東京湾、そして千葉へと、横断的に計測できるので、やはり航空機は強い。横で威張っているのが、観測の中心人物I君である。彼は、本当にタフな男だ。今は、国土交通省のキャリアとして活躍している。