2023/2/1

【神田先生より寄稿】都会にて(1) ―大寒のさざんか―


こんにちは。Webマネージャーの添田です。今回は神田先生より記事の寄稿を頂いたので掲載致します。神田先生ありがとうございます! By Soeda

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大寒である。寒い。おまけに今冬は記録的な寒波が南下してきた。東京でも最低温度はマイナス4度。分厚い手袋と靴下で防寒しても、多摩川縁をチャリンコで走ると大学につく頃には手足の先の感覚がなくなっている。

このような寒さの中でもキャンパスのさざんかは例年と変わらず綺麗な花を咲かせている。大岡山キャンパスは、春は桜、秋は銀杏の紅葉が有名で、近隣からも多くの見物客が訪れる。が、冬のさざんかは忘れ去られたようである。

さざんかや寒椿は、庭先などにもかなり多くあり、自然の乏しい都会の冬にあって、その鮮烈な赤色は都会人を癒してくれる、はずである。にもかかわらず、桜、梅などにくらべて、印象は地道で、気にかける人も少なく、みな足早に通り過ぎていく。

ある夕方、一日の疲れを引きずりながら対面会議のために居室からキャンパス内を移動している途中、角を曲がると、思いがけず、目の前に、見事な花を一斉に咲かせているさざんかの群生があらわれた。駐車スペースにある多くの車に隠されているのが残念だ。さざんかの群生の先には、夕焼けの名残を残した薄暮に、富士山とビル群の黒いシルエットが妙に調和して浮かび上がっていた。

何だか、とても幸せな気持ちになり、もうひと頑張りするかと心の中で呟いて、会議場に向かった。