修士1年の下重です。

神田研に来てから早くも3ヶ月以上が経過しました。
今は子供の頃からやりたかった都市型集中豪雨の研究をWRFを使って進めています。

都市型集中豪雨は都市化との関連性が疑われ、最近テレビ等でもよく取り上げられる事で広く一般に周知されるようになりました。
そこで人口廃熱等、都市化によって生じる様々な影響をWRFに組み込み、シミュレーションさせることで
都市型集中豪雨がどのようなメカニズムで発生するのかを解明することが本研究の目的となっています。

今回は東京都心で1時間に82.5mm(AMeDASデータ)と言う観測史上2番目の豪雨を記録した
2000年7月4日の日をWRFでシミュレーションした結果を紹介します。
建設局河川部の降雨計のデータ(下図、カラーバーは10分間降雨量)では18:00頃新木場周辺で10分間に20mm以上という
猛烈な雨を記録しています。





一時間の積算雨量なので分かりにくいですが、この時のレーダー・アメダス解析雨量を見ると、
中部山地で発生した雲による降水域が北東-南西方向に伸びる帯状の降水域となって関東平野に向かって東進しています。
実際に細かい時間ステップで見ていくと徐々に東進していく栃木-埼玉方向に伸びるレインバンドが観測されており、
そこから発生した外出流が都心上空で発生した積乱雲を強化したり、
別の積乱雲とマージしたりして新木場付近で豪雨をもたらしたとされています。




次にこの日をWRFで計算させた結果を示します。
4重ネストで計算させ、最小の空間解像度は4重ネスト目の300m、鉛直方向は58層に切ってます。
また、人口廃熱の影響を組み込んでいます。

降水量の結果(下図)を見ると都心部で発生した豪雨は再現できませんでしたが、山地で発生した雲によると思われる降水や
徐々に東進していく帯状の降水域が綺麗に再現できています。
帯状の降水域を実際の場と比べると時間的に1〜2時間早く、空間的に50km程度東方向にずれていますが、
メソ気象場を数値シミュレーションで再現するのは大変難しいとされている中、今回の結果は時間的にも空間的にも
実際の場とかなりよく合致していると言えると思います。






ちなみに16時20分に解析されている積乱雲を鉛直方向に切ってみると対流圏界面付近まで延びる上昇流と、
下降流が共存している積乱雲の最盛期の特徴を綺麗に見ることができます。




今後は他の日をシミュレーションしてみたり、都市化により発生する影響を組み込んだ場合と組み込んでない場合を比較する等
して、都市型集中豪雨の発生メカニズムを少しずつ解明していきたいと思っています。
また面白い結果が出たら紹介します!



神田研究室 修士1年 下重亮