四大学連合 複合領域コースを終えて

小林賢司

私は、学部2年次より通常の学科授業に加えて、四大学連合複合領域コースに所属し他大学で合計6つの科目を受講してきました。学部卒業、コース修了にあたり、複合領域コースで得たものや経験などを紹介しようと思います。

とは言っても、四大学連合複合領域コースと言われてもおそらくピンと来る人はなかなかいないでしょうから、コースについて簡単に紹介します。

四大学連合複合領域コース

四大学とは、東京医科歯科大学、東京外語大学、東京工業大学、一橋大学を指し、学際領域、複合的な領域の研究教育の推進を図るために結成されたものが「四大学連合」です。このうち、主に東京医科歯科大学、東京工業大学、一橋大学の間で設けられた特別履修プログラムが「複合領域コース」ということになります。複合領域コースに参加した学生は、自大学に加え、他大学の講義を受けることができ、一定の修了要件を満たした場合にコース修了認定を受けることができます。複合領域コースは総称であり、ターゲットとする領域ごとにいくつかのコースが設けられ、それぞれに推奨科目が設定されています。詳しくは、こちらを参照してください。

http://www.gakumu.titech.ac.jp/kyoumu/20-guide/hukugou.pdf

私は数あるコースの中から海外協力コースに参加したわけですが、複合領域コースに参加しようという意志は東京工業大学へ出願する時点で決まっていました。単科大学でありながら、異なる学問分野の科目を聴講することができ、幅広い知識を得ることができることが大変魅力でした。実際に複合領域コースの聴講生として他大学の講義に参加し、東工大では学べないこと、感じられない雰囲気など多くのものを得ることができたと思っています。

履修科目

さて、履修した科目は、東京医科歯科大学において3科目、一橋大学において3科目です。科目名を挙げると、「微生物学」、「保健医療福祉制度論」、「社会医学」(以上医科歯科大学)、「国際社会学T」、「アジア社会史総論」、「民族誌」(以上、一橋大学)となります。どれも東工大では学ぶことのできない科目で、大変有意義でした。例えば「社会医学」などは途上国などで蔓延しているがなかなか国際的トピックにならない「neglected diseases」や、社会の健康への影響などについての講義がありました。このような普段知りえないような、考えないようなことを知り、考えることができることがこのコースのメリットの1つだと思います。この講義では、知的な好奇心を満たしてくれるものであったと同時に、未知との遭遇とも言えるような新鮮さを感じました。「民族誌」は、カリブ海地域の「奴隷」であった黒人の思想や心理を取り扱うものでした。思想史、心理学の要素を含んでいたので難しい講義でありましたが、自分たちとは違う背景を持つ黒人の思想的背景を知ることができて、視野を大きく広げられたと思います。また黒人の白人に対する感情や考え方の一端を知ることができ、大変興味深いものでした。

ただ、移動に時間がかかることに加えて、授業日程が大学によって異なるために(特に医科歯科大学の医学部、歯学部は曜日とは独立に各科目の授業日程が組まれている)、興味があり、履修したいと思った科目を満足に聴講することができなかったことは心残りです。出席する講義を厳選する必要があり、多くの講義に参加するには学部の早いうちに東工大の単位を取りきる必要があったと感じました。

感想

私が複合領域コースを続けた理由として、入学前からのモチベーション、興味深い講義に加えて、他大学の雰囲気を味わうことが楽しかったということが挙げられます。東工大という日常の雰囲気を離れて他大学という異なる雰囲気を感じることに楽しみを感じていました。同じことが講義の内容にも言え、普段の工学を離れて社会学や医学、保健衛生学などという分野の勉強をすることが楽しかったです。だから複合領域コースの履修に関しては勉強ではありますが、息抜きのような感覚で取り組んでいました。

先ほども書きましたように、決して満足のいくだけの知識を得られたわけではありませんが、それでも東工大で講義を受けるだけでは知りえないような、考えないような事柄を少しでも知ることができたということが複合領域コースにおいて得たものであると思います。また、異なる大学で、異なる専門を持つ人々に囲まれて講義を受けるという経験ができたことも複合領域コースで得たものといえると思います。それだけ異なる大学の講義に参加するということはいい刺激となりました。医科歯科大学では、とても熱心に勉学に励む姿に刺激を与えられ、一橋大学では、文系の学生と交流できたことそれ自体が大変いい刺激となりました。

 終わりに、複合領域コースに参加してよかった、修了することができてよかった、というのが素直な感想です。時間的に大変な部分もあったが(一橋大学で2限、東工大で3限など)、それ以上に得たものは大きかったと思っています。時間的、体力的にも大変であることは間違ありませんが、それにも増して楽しいこと、面白いこと、興味惹かれることが複合領域コースにはあると思います。また個人的には、このような厳しい条件の中でこのコースを修了できたことが今後の自信になると思っています。もし少しでも興味を持っているのであれば、複合領域コースに出願することをお勧めします。



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