巻頭言 : 神田学
  留学は人生の宝物!


IAESTEというインターンシッププログラムの留学報告書に当時(2015年)IAESTE理事として巻頭言を執筆しました。
せっかくなので研究室のホームページにもアップします。

理事の一人として巻頭言を書くようにとのことなので筆を取ったわけであるが、実は私自身はIAESTE研修生としての留学体験はなく、東工大に教職を得た直後のミレニアム2000年に環境首都で有名なドイツ・フライブルグに1年間客員として滞在したのが遅すぎる留学デビューであった。以下は、専ら個人的体験から感じた留学の勧めである。ある程度の期間を異国で過ごせば、予期せぬ暖かな配慮に涙することもあるが、陰険で心無い差別・騙しに下手な英語で孤軍奮闘することも多々あるもので、全てがバラ色というわけにはいかない。滞在先に籠らず、積極的に動けば動くほど、プラス体験・マイナス体験の揺らぎに翻弄され、感情の浮き沈みは増幅する。帰国後数年はそれほど意識しないが、年を重ねるにつれ、良い思い出も悪い思い出も、どんどん輝きを増し、そのすべてが人生でかけがえのない宝物になっていくのである。親元で、下宿で、淡々と過ごす代わり映えしない日本の日常、そこに埋没していると安全で安定な半径数百mの生活空間を世界のすべてと錯覚しがちであるが、それは無数に存在する世界の1つに過ぎない!そんな当たり前のことに括目させられるのが留学体験なのである。

 このように、私にとっての留学は、コペルニクス的転回、第2の誕生と言えるほど熱いもので、その後の人生に大きな影響を及ぼしているが、色々な留学体験者に聞いてみると、おしなべて「留学はよかった」という答えが返ってはくるものの、どうにもかなりの温度差・個人差があるようである。滞在先に舞台を変えて単に日常の延長を過ごすのか、五感を研ぎ澄ませて異郷のすべてを吸収しようとするのか、その人の姿勢によって留学体験の意味が大きく違って来るのではなかろうか。

 私自身の留学は完全燃焼に近いものであったが、唯一残念なのは、もっと若いうちに、できれば20代に行ってみたかった。みなさんが、羨ましい……


著者紹介
神田学
(一社)日本国際学生技術研修協会理事

写真:留学先のドイツ・フライブルグの旧市街にて



「神田先生からのメッセージ一覧」に戻る